楽しいニュース.com

世の中の明るいニュース、あつめました!

2019.11.13科学・Tech

スマホ時代は角膜が危ない! 知らずに傷つけてるかもしれない角膜のケア方法とは?

 

パソコンやスマートフォンを見る時間が増え、目に負担がかかりやすい生活に変わってきています。
何気なく過ごしているだけでも、現代人は「角膜」を傷つけがちです。
そのような状況を受け、スマホ時代の「角膜危機」と角膜のケア方法に関する勉強会が 11月1日(金)、開かれました。
ドライアイの専門医である吉野眼科クリニックの吉野 健一院長と、OTC医薬品を展開するライオン株式会社研究員の奥村 隆さんによる勉強会の要点をご紹介します。

 

吉野眼科クリニック 吉野 健一院長

 

■現代生活は角膜危機をもたらす要因でいっぱい。専門医が教えるドライアイと角膜上皮障害

 

ドライアイの患者数が年々、増えています。
「目が疲れやすい」「目がゴロゴロする」「ものがかすんで見える」「光をみるとまぶしい」などの症状はありませんか。
ドライアイという名前から目が乾くイメージがありますが、併発する病気や進行度により、ドライアイの症状はさまざまです。
初期には乾いた目を潤そうとして、かえって涙が出ることもあります。
ドライアイは深刻化しても失明に至ることがないため、軽く考えられる傾向がありますが、放置すると危険です。
ドライアイで涙に異常が起こると、目の最も外側にある角膜上皮細胞が傷つきやすくなります。
次のチェックリストで当てはまる項目が多ければ、既にあなたの角膜は傷ついているかもしれません。

 

チェックリスト

 

角膜上皮は、健康な状態では細胞同士が緊密に結びつき、細菌や真菌、アメーバなどの外敵を排除しています。
ところが、角膜に傷がつくと、これらの外敵が傷口から目の奥に入りこんでしまい、細菌性角膜炎などの感染症になる恐れがあります。
感染症は完治しても、目のなかに傷が残ると、視力の低下や、場合によっては失明に至ることもあります。

 

角膜のバリア機能の低下

 

左 真菌性角膜炎 (画像出典:杏林大学医学部 杏林アイセンター)
右 細菌性角膜炎 (画像出典:東邦大学医療センター 大森病院)

 

こうした角膜の危機をもたらすのが4つの環境要因 PACSです。
パソコン・エアコン・コンタクトレンズ・ストレスの頭文字をとったもので、いずれも涙液や角膜上皮の異常を引き起こすきっかけになります。
このほか、スマホの長時間利用や涙の通り道を塞いでしまうインラインメイクもトラブルのもと。
現代は角膜にとって未曾有の危機とも言える状況なのです。

 

■目に痛みがなくても角膜が傷ついている可能性も。眼科でのドライアイの検査と一般的な治療とは?

 

誰もがドライアイ・角膜上皮障害になりやすい状況にあります。
自分はドライアイなのか、角膜上皮に傷がないかが気になったら、眼科で検査を受けるとよいでしょう。
コンタクトレンズを使っていると痛覚が鈍くなり、角膜が傷ついても気付かないケースもあるそうです。
眼科では次のような検査を行います。
瞬きをしてから涙が乾ききるまでの時間(BUT)の計測、傷の有無を調べるための角膜・結膜の染色、眼瞼(まぶた)の観察です。
勉強会ではフルオレセイン、リサミングリーンという染色液を使い、角膜を染めて傷の診断も行いました。
当日、特に目の違和感や痛みはなかったものの、コンタクトレンズ使用や長時間のパソコン作業など、角膜を傷つける要因にはいくつも思い当たる節があります。
実際に、染めた目を撮影してもらうと、角膜にはありませんでしたが、白目の結膜の方にコンタクトレンズの摩擦でできた傷があり、緑に染まっているのが確認できました。

これもドライアイの一種で、一般の眼科では見落とされやすいそうです。

 

リサミングリーンで染色した目の画像(出典:当日撮影写真)緑の部分が傷

 

角膜に多くの傷がついている症例はこちらです。こうなると真菌性角膜炎や細菌性角膜炎の写真のような感染症を起こす危険があります。

 

フルオレセインで染色した目の画像(画像出典:杏林大学医学部 杏林アイセンター) 緑の点状の部分が傷

 

ドライアイに対する眼科での一般的な治療は、人工涙液や涙を安定させる目薬、眼軟膏の処方です。

原因や重症度に応じて専門治療が行われることもあります。
また、角膜を守るにはセルフケアも重要です。室内の加湿を心がける、パソコン作業時は意識的に瞬きをする、ストレス解消に努めるなどの生活指導も行われます。

 

ライオン株式会社研究員 奥村 隆さん

 

■角膜修復効果で注目のビタミンA(レチノール)配合目薬 メーカーの研究員に聞いた、角膜に良い目薬の使い方も紹介

 

傷ついた角膜の修復効果があると、今、注目されている成分があります。
アンチエイジング化粧品にも使われている、ビタミンA(レチノール)です。
この成分は次の2つの働きで傷ついた角膜の回復を促します。
ひとつは角膜上皮細胞に対する働きで、細胞の新陳代謝を促します。
レチノールには角膜上皮細胞の成長を促すヒアルロン酸をつくらせる働きがあり、これによって新しい細胞が再生され、傷の修復が進みます。

 

ヒアルロン酸産生効果

 

もうひとつは涙の質を改善する働きです。
レチノールはムチンと呼ばれる、涙をつなぎとめる成分をつくりださせるため、角膜上皮の環境が改善します。

 

涙の構造 もっとも角膜に近い部分にあるムチン層は粘液の層で、涙を目の上につなぎとめている。

 

ビタミンAは水に溶けないため、目薬に配合するには高い技術力が必要です。
20年以上前からビタミンA配合の目薬を発売しており、ビタミンAの有効性に関する研究も多いライオンでは、ビタミンAを目薬に安定的に溶かす方法やビタミンAをより多く角膜の奥へ届けるための方法を研究し、改良を重ねてきました。
現在、販売しているビタミンA(レチノール)を配合した目薬では、実際に角膜の傷を修復する効果も確認されています。

 

 

ビタミンAの角膜の傷の修復効果を確かめるため、ドライアイ患者66名を対象に実験を実施

 

このような傷を治す目薬の効果を高めるには、コツがあります。ポイントは目薬を差すタイミングで、おすすめは

 

①角膜が傷つきやすく、目も乾きがちな朝、
②目が疲れてくる昼から午後にかけて、
③角膜修復のゴールデンタイムである就寝の前

 

の3つです。

 

■まとめ

 

ドライアイの専門医である吉野院長は「特にドライアイになりやすい年代はない」といいます。
スマホやゲームを見る若者、加齢により涙が減少するシニアと、年代によってそれぞれ原因があり、すべての世代で角膜ケアを意識する必要があるそうです。
市販の目薬も上手に使い、厳しい環境下におかれている角膜をいたわってあげましょう。

 

■プロフィール紹介

 

吉野 健一先生
吉野眼科クリニック 院長
東京歯科大学・日本医科大学 眼科講師

アメリカで確立されたドライアイの概念を日本に持ち込んだ研究グループの一人。
1990年から2年間、慶應義塾大学病院でドライアイ外来を担当し、その後、ドライアイの研究のために渡米。
帰国後に吉野眼科クリニックを開業。
地域密着のホームドクターでありながら、ドライアイ外来や白内障手術などの高度な専門治療を行う専門医としても活躍する。

 

奥村 隆さん
ライオン株式会社 薬品研究所 主任研究員
ライオン目薬はかせ。
OTC点眼薬「スマイル」シリーズの開発を担当。人生100年時代の目の健康サポートを目指し、ドライアイの研究に従事。

 

(編集 森川 創)
関連リンク:
吉野眼科クリニック(銀座線「上野広小路駅」 から徒歩1分)

https://www.yoshino-eye-clinic.com/

ライオン スマイル角膜研究所

https://smile.lion.co.jp/campaign/kakumakulab.htm