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2020.04.25話題・おもしろ

アニメ pet/夏目友人帳/デュラララ!!/海月姫などを生み出した 大森 貴弘監督にロングインタビュー! (後編)

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©三宅乱丈・KADOKAWA/ツインエンジン

 

先日まで放送して好評を博していたアニメ『pet』や『夏目友人帳』『デュラララ!!』『海月姫』などなど、数々のアニメヒット作品を生み出している大森 貴弘監督(以下、大森監督)に担当されたアニメ作品を中心にアニメのお話をたっぷりとお聞きしました。今回は、その後編です。

 

丸川 有紀さん

 

後編からは、アニメと猫が大好きなモデルの丸川 有紀さん(以下、丸川さん)に加わっていただき、ファン目線でインタビューを手伝ってもらいました。
丸川さんは、小さい頃からセーラームーン、中でも特に、待ち受け画面にするほどセーラーヴィーナスが好きで、『セーラームーン』のミュージカルを観に行き、そのときに 3次元にセーラーヴィーナスが存在することに感動して、鳥肌が立って、自分も誰かを感動させて鳥肌を立てさせるような存在になりたいと、芸能事務所のオーディションに応募してモデルとして活動しています。

 

左 丸川 有紀さん 右 大森 貴弘監督

 

さて、前回は、監督になるまでのことを中心にお話いただきました。今回は、最近の代表的な作品について、お話していただきます。

 

—– 大森監督、引き続き、よろしくお願いします。

 

大森監督:
先ほどお話した京都アニメーション(以下、京アニ)の木上益治さん他、当時の京アニのメンバーには、スタジオぴえろで監督をしているときに、「グロス」の回のメインスタッフとしてやっていただきました。
グロス回というのは、アニメのテレビシリーズで元請の制作会社から下請けの制作会社に 1話分まるごと制作をお任せする回のことで、最初の監督作品のグロス回が京アニさんだったので、任せておいたらちゃんといいものが上がってくるんだな、と思ってました。あとで大きな勘違いだと気付く事になるのですが(笑)
当時から 京アニさんは丁寧なものづくりに定評があり、個々のアニメーターや演出家はすごくまじめで、コツコツとやってくれるという人たちの集団という印象でした。
何人かの上手い人たちが作画監督をやって、原画が経験不足でも作画監督のチェックを経て、その後の動画仕上げの行程もすべて社内と関西圏の直接やり取り出来る外注さんで作業していたようで、最終的にはきれいなものを仕上げてきてくれたので、リテイク修正が極端に少なかったですね。
今はどうか分かりませんが、当時は入社したらまず、すべてのセクションを一度体験してから自分に向いた部署に付く、と言うシステムを取ってたようで、京アニさんは理想的なモノづくりの現場だと、当時から思っていました。
涼宮ハルヒの憂鬱』の監督をされる石原立也さんと一番付き合いが長かったですね。毎週のように顔を合わせていました。

そういう意味でも、昨年の事件は本当にショックで胸が締め付けられる思いでした。

 

丸川さん:
私も聖地巡礼に行くほど『Free!-Dive to the Future-』のファンだったので、ニュースを見るたびに犠牲者の方が増えていって気が気ではなかったです。

 

大森監督:
20年近く監督をやっていますが、木上益治さんのように美しい絵コンテを描く人は見たことがありません。
今まで 300-400本は絵コンテをチェックしてると思いますが、木上さんの絵コンテは一切の「ためらい線」がありませんでした。

下書きもしていないし、ほぼ一発描きなので、描かれる前から頭の中でしっっかり絵が決まっているんですね。
パワーストーン』という作品で 3本ほど絵コンテをやっていただいているのですが、そのまま拡大コピーするだけでレイアウトになってしまうんです。
通常、拡大コンテで作業する場合は、アニメーターが清書も兼ねてレイアウトに起こすのですが、木上さんの拡大コンテは背景とブック(セルよりも手前に重なる背景素材)とセルと、色分けだけして背景さんに入れれば、そのまま使えてしまうんです。

ご本人は「若い子の育成には良くない」と嘆いておられましたが、スケジュールが切迫していたので、こちらとしては本当にありがたかったです。
その『パワーストーン』は、アクションゲームが原作なんですが、アニメ化のオファーをいただいたのが放送の 3カ月前というタイミングでして(笑)
時間がない上に、原作にはキャラクターと設定はしっかりしたイメージがあるのですが、順序立ったストーリーはないので、一から創作しなくてはならず、制作は立ち上げから大変でした。

 

『海月姫』 ©東村アキコ・講談社/海月姫製作委員会

 

丸川さん:
アニメ作品はオファーされるものと自分から提案するものとどちらが多いですか。

 

大森監督:
9割はオファーがあって決まります。自分でやりたいと言って決まったのは、『pet』だけだと思います。

『サムライフラメンコ』はオリジナル作品ですので、自分の提案も多く反映されていますが、元々倉田英之さん脚本と僕の監督、という組み合わせで企画されたものですから、自分からではないんです。

『海月姫』に関しては、原作者の東村アキコさんが『ひまわりっ 〜健一レジェンド〜』という漫画をコミックモーニングで描いてらっしゃいまして、先にそれを毎週読んでは爆笑していたので、『海月姫』のオファーがきたときは二つ返事でOKしました。

『ひまわり〜』は今年、実写ドラマ化されるようですね。主人公健一のモデルが、東村アキコさんのお父さんで、その破天荒ぶりを描いた傑作です。あれをどうやってやるんだろう、と今から楽しみにしてます。
東村アキコさんご本人も本当に面白い方で、お会いしてお話したら腹がよじれるほど笑いました。

18年ぐらい前、監督業に隙間が出来た頃に、『灰羽連盟』という作品の助監督をしてまして、羽の生えた 7人の天使のような少女たちの物語なんですが、村上春樹さんの『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』という小説に、壁に囲まれた土地に住んで牧歌的な生活をしている、というシチュエーションが出てくるのですが、設定が似ていて、当時春樹さんの作品にハマっていた時期だったのもあって、のめり込んで仕事しました。色々と苦労も多かったけど、野心的な作品で楽しかったです。
その作品に携わっていた頃に『pet』の連載が始まりまったんですよ。

考えてみれば、これも原作の三宅乱丈さんが、コミックモーニングに描かれたギャグマンガ『ぶっせん』が好きで、よく読んでたんですよね。人間のおかしみを的確に表現していて大ファンでした。
その三宅乱丈さんが、ビッグコミックスピリッツで新しい連載を始めたのが『pet』で、真逆のシリアスな内容でびっくりしました。

 

『pet』の台本と絵コンテ

 

丸川さん:

すごくシリアスなストーリーですね。
アニメの『pet』のオープニング映像はとてもきれいなんですが、鬼気迫った表情からは怖さも感じられて、本編のキャラクターの描写もとても個性が強いですよね。

 

大森監督:
原作の絵はもっと濃いんですよ。『ぶっせん』の頃から、思い切った描線とリアルな表情の描写で、僕は最初、原作は男性だと思ってたんですよね。

けれど、『pet』に関しては、あの絵のおかげで、なかなか企画に乗らなかったというのもありました。
話の内容が複雑で難しいということと、絵がリアルで表情変化が激しいので、今のさらっとした絵が主流のアニメ作品の中では、ウケないと思われていました。
それでも、いろいろな機会に「『pet』をやりたい」と言い続けていまして、『海月姫』の制作当時、ノイタミナの編集長をしていた山本幸治プロデューサーに「他にやりたい作品はありませんか?」と言われて、『pet』を提案したんです。

それからさらに 8年後、山本さんが立ち上げた企画製作会社ツインエンジンで企画が決まり、その子会社であるジェノスタジオでの制作が決まるまでに、連載終了から15年もかかってしまいました。それから開発に入ったものの、難解に感じる設定を分かり易く整理、構成して、尺に乗るように必要な台詞をギリギリまで切り詰めたり、キャラクター設定の造形にかなり時間がかかってしまいまして、シナリオ打ちから含めて丸2年かかって、漸く皆さんにご覧いただけるようになった次第です。

 

 

丸川さん:
このインタビュー取材のお話を去年の夏にいただいてから、ずっとお話が立ち消えになっていた理由がようやくわかりました(笑)
ところで、『pet』に登場するヤマとタニの映像の分け方というのは、はっきりとしたイメージがあったのですか?

 

大森監督:
ヤマタニに関しては、スタッフには、現実世界と極端に変わって見えるようにしたい、と話しました。それを美術監督がそれぞれのタッチが変わるように絵作りをして、さらに色彩設計や撮影でさらに際立つように盛って行った感じですね。
逆に、ヤマタニ以外の記憶の世界の移り変わりは、なるべく現実と変えないように、シームレスに繋がるように描写しています。
他の作品、例えば『夏目友人帳』にしても『デュラララ!!』にしても、時間軸が変わるときに、なるべく視聴者に分かりやすくなるようにフィルターをかけたり、色調を変えたり、シーンの導入に気を付けたりしてますが、今回は記憶と現実が密接に影響を及ぼし合ってていると言う設定ですから、多少分かりにくくても敢えて、視聴者が積極的に作品にアプローチして行く必要があるような演出を心がけました。

 

丸川さん:

『デュラララ!!』は、池袋という実在している場所がアニメで描かれていますが何か気をつけたことはありますか?

 

大森監督:

『デュラララ!!』に登場する池袋は、街自体がキャラクターのひとつのような意味合いがありますので、制作当時の街並みや位置関係を忠実に作りました。

ただ、固有名詞は迂闊に使うわけにいきませんので、通常、ビルなどの看板の中の文字をもじったりしてごまかすのですが、『デュラララ!!』の場合は、そもそも必要なもの以外は描かないようにしました。

複雑な現実の街をリアルに描写するばかりでなく、スタイリッシュにも見えるように出来たんじゃないかと思います。
また、他の地名が明示されない作品では、基本的には、なるべくその場所が判らないようにしたいと思っています。

『夏目友人帳』の場合も、「日本のどこにでもある田舎町」と言うイメージで作っていました。

作品が評価された今となっては、それによって観光需要が生まれたりもして、功罪ありますので「判らないように」とまでは考えていませんが、作中で限定的にはしたくないと言うのは同じです。
いずれにせよ、固有名詞や商標などは権利的に問題が発生しかねないですし、画面に映り込んだ施設や個人宅などに、何らかの迷惑がかかる可能性もあるので、限定されないようにとは思っています。

 

丸川さん:

『デュラララ!!』で唯我独尊丸が出るシーンは、私の飼っている猫も反応するくらい本当の猫の声に似ていますが、声録りした時のエピソードはありますか?

 

大森監督:

唯我独尊丸は、エミリア(岸谷森厳の新妻)を演じていただいた種﨑淳美さんが兼ねてやって下さってますが、元々器用な方で動物キャラも経験があったので、おまかせで一発OKでした。

あとは動きに合わせてアレンジしていった感じです。ちなみに僕も 4匹の多頭飼いです(笑)

 

『デュラララ!!』 ©成田良悟/アスキー・メディアワークス/池袋ダラーズ

 

丸川さん:
『デュラララ!!』は、ストーリーの中で時間が戻るので、何度か観返さないと ひとりひとりのキャラクターを覚えきれない作品ですね(笑)

 

大森監督:

原作者の成田良悟さんが、そういうのが好きなんです(笑)
バッカーノ!』が、僕が最初に担当した成田良悟さんの作品なのですが、主人公を決めたがらない方なので、『デュラララ!!』以上に『バッカーノ!』のほうが複雑です(笑)

テレビ放送で 13話、OVAを加えた全 16話をすべてご覧になると気持ちよくなるように作りましたので、未見だったら是非(笑)
『バッカーノ!』は 1930年代 禁酒法時代のニューヨークが舞台で、映画なら『アンタッチャブル』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』あたりのマフィア(カモッラ)同士の闘いを中心に描いています。

不死の酒を争奪するような物語なんですが、登場人物の多くが不死者なので、同じキャラクターが別の時代にも出てくるんですね。

1700年代、1930年、1934年、1970年代、そして現代と、アニメ版ではいろいろな時代を行ったり来たりしながら描いています。
小説では、描写されているのが誰であるか、明確には言わないということもできるのですが、映像化するとそういうことが難しい。1シーンくらいならともかく、延々と隠しておく事がかなり厳しいんです。

そこで、小説では基本的に 1つのエピソードが 1つの時代の中で描かれているのですが、アニメ版では登場人物が同じでも、時代を行ったり来たりさせてしまおうと考えました。

ある時代で起こったことがきっかけで、別の時代に事件が起きたり逆に解決されていたりと、全部観ていくうちに繋がっていくという形にしています。
その時に、いくら時代が飛んだり複雑なことをしても、キャラクターに魅力があって、キャラクターを好きになってくれたら、ちゃんと観続けてもらえるということを実感したんです。

だから『デュラララ!!』をやるときも、多少そういう一見関連のない、繋がって見えないストーリーの語り口にしても大丈夫と確信していたので、よりキャラクターを中心に見せていく形で制作してます。

帝人(みかど)というキャラクターが 1話から登場しますが、主人公のように見えて、物語上はとても影の薄い存在です。
序盤のエピソードで、彼は毎回ただ傍観者として登場しますが、首なしライダーの都市伝説や矢霧製薬との抗争の話が裏で続いていく中、11話で帝人がふたつの事件を解決するまでを、他のキャラクターのエピソードベースで繋いで行く形で作っていきました。
原作では文字でできる隠し方をしていて、もう少し順を追って描かれているのですが、アニメでそのとおりに作ってしまうと隠し切れずドラマ性が薄れてしまうので、あえて各話で描写されるキャラクターを限定して、他を隠して断片的にものごとが進んでいるのを見せるような作り方を選んだんです。

 

丸川さん:
1話と 2話の話の切り方が絶妙にうまいですよね。
『デュラララ!!』は、キャラクターが多いので、それぞれのキャラクターにファンがつくことができますよね。
ちなみに私は静雄が好きです(笑) 小野Dなので。(編集部注:静雄役の声優 小野 大輔さんの愛称)

 

大森監督:
臨也(いざや)ファンと静雄ファンが多いですよね。
オーディションをしたときに、一発で小野さんがいいなと思いました。本人は、「あまりこういう役はいただいたことがなかった」とおっしゃってましたけど、僕はその辺、よく知らなかったので、むしろ意外でしたね。
臨也役の神谷浩史さんは、既に『夏目友人帳』でご一緒してたので知っていたのですが、幅の広さを実感しました。オーディションでも、あのいやらしい感じがうまく出ていました(笑)

 

丸川さん:
神谷さんと矢霧波江役の小林沙苗さんは、『夏目友人帳』にも出演されていますよね。

 

大森監督:

『夏目友人帳』のほうが『デュラララ!!』よりも先です。お二人ともオーディションで選考しました。
ただ小林さんは僕自身がその前に何度かお仕事させて頂いて、単純にファンでしたので、割と作品に入れることが多いですね。

『バッカーノ!』でも入っていますし、『ワンダーベビルくん』にも小林さんに出演していただいています。

アニメ業界は、絵の監督と音の監督は別の人が担当するという考え方が一般的です。
それは、単純に仕事量の問題と、絵描きにはコミュニケーションをとるのが不得手な人が多いので、役者(声優)さんへの演出は慣れた人が行うほうが効率がよいからです。
ただ、僕はカラオケの映像制作の経験から、以前からライブ感のある仕事もしてみたいと思ってまして、監督と言っても絵の方だけだと、ほとんどは机にしがみついて、目の前の紙と格闘する、アフレコの現場でも横に座ってたまにひとこと言うくらい、という事がほとんどなんです。

それで『地獄少女』で、初めてアフレコ演出もやらせてもらうことになりました。

あとで知ったのですが、この『地獄少女』の原作者である、わたなべひろしさんが、(前編でお話した)劇場版アニメ『新きまぐれオレンジ☆ロード そして、あの夏のはじまり』で、当初ダンスシーンを担当予定だったのに急病で出来なくなった人だったんです。

わたなべさん自身もその後、その病気がきっかけで監督デビューする事になったとおっしゃってまして、あの病気でふたりの監督が生まれたんだね、なんてその偶然を笑い合いました。

 

『夏目友人帳』 ©緑川ゆき・白泉社/夏目友人帳プロジェクト

 

丸川さん:
『夏目友人帳』でニャンコ先生・斑役の井上 和彦さんはすごくアドリブが多かったと聞いたことがあります。

 

大森監督:

テストで絶対にヘンなことをやってくるので、本番でもやって、と要求することもありましたね(笑)

サービス精神旺盛な方なので、現場を和ませる為もあると思うんですが、絶対にかましてくるんです(笑)

 

丸川さん:
中級妖怪たちもそうですよね。

 

大森監督:
そうそう、あの二人(中級妖怪一つ目は松山タカシさん、牛顔は下崎紘史さん)は、すごく考えてきてくれるんです(笑)

そういうのはだいたい却下しちゃうんですけどね(笑)

台本上は、完全にお任せにはしないように、ダジャレみたいなことを何かしら書いておくんです。で、他のを現場までに考えてきてくれるんですが、ひねりすぎて分かりにくくなる事が多くて(笑)

 

丸川さん:
(夏目のクラスメイトの)笹田さんは原作では、時雨さまの回にしか登場しないのに、アニメ版では(1期第4話『時雨と少女』以降)レギュラー出演されていますよね。

 

大森監督:
『夏目友人帳』のお仕事をいただいたときに、テレビシリーズにするにはちょっとアレンジが必要かなと思いました。

この作品は、妖怪ハンターものじゃなくて、妖怪と少年が織りなす心温まるふれあいストーリーですが、もうちょっとお茶の間ドラマ的な日常性が必要かな、と思ったのです。
主人公の夏目貴志は心を閉ざしてしまっているけれど、自分の殻を破ることで得られることがたくさんあって、その成長を原作の緑川ゆきさんは描こうと思ったんだと思います。

だから、夏目が心を開いた時に、周りにごくありふれた友だちや学校の環境が必要だと思ったんです。
原作でもクラスメイトとして北本と西村が最初からいましたが、女の子が一人欲しいなと思い、アニメ版では笹田を退場させないで残ってもらいました。
子供の頃に観た学園ドラマで、学級委員長的な役割の人がいたのですが、あのバランスが欲しいなと思ったんです。

 

丸川さん:
笹田さん役の沢城みゆきさんも、たった 1話だけ登場させるのはもったいないと思っていました。レギュラーで出演してくれてよかったと放送当時、友達と話していました。

他にアニメ版で工夫されたオリジナル要素はありますか?

 

大森監督:
中級妖怪の一つ目は狡猾なキャラ、牛顔はちょっと頭が足りないキャラ、と、はっきりとキャラクター付けをしました。

一つ目が言った台詞のあとに、続いてくりかえしてお囃子を入れる感じで。演じた二人もギャグを作りやすかったんじゃないかと思います(笑)

 

丸川さん:
ニャンコ先生が夏目とケンカをして八ツ原に行くときに、中級がニャンコ先生の悪口を言うシーンが面白かったです。

 

大森監督:

『ニャンコ徒然帳』(アニメ版1期11話)ですね。
夏目とニャンコ先生をちょっと離してみようかと、オリジナルで入れた回です。
原作にあった、ニャンコ先生が穴に落ちて女の子に出会うというショートエピソードをベースに、膨らませて作りました。
あの時にニャンコ先生が歌った「天丼のブルース」は完全にアドリブです(笑)
テストのときに井上さんが歌って、なんじゃこの歌は!と思ってましたが、井上さんに 本番どうしましょう?と聞かれて、じゃあさっきので、ということで、適当な節回しで井上さんが歌われたものです(笑)
『地獄少女』が各話完結の話数ゲストが中心の作りだったので、アフレコ演出で毎回お歴々のビッグゲストと仕事ができたのは、最初の体験としてとても勉強になったんです。

その時に、ベテランの演者さんに現場の空気作りを任せる、ということを学びました。

演者陣の中にひとり大黒柱のような人がいると、ブースの中の空気をまとめてくださってすごく助かるんです。そのひとりが井上さんでした。
夏目役の神谷浩史さんは、当時、バイクでの大事故を経て、以前にも増して仕事に前のめりに取り組んでいた時期で、繊細な夏目を演じるにあたり、自分を追い込んでいて、1期目のときは誰とも話さないで、休憩時間は耳を塞いでうつむいてセリフの反復をしていました。
ストーリーが進んで、だんだん夏目の角が取れて柔らかくなっていくとともに、神谷さんも徐々に自分のペースを取り戻していった感じで、その調和も運が良かったと思います。

 

 

丸川さん:

放送当時、友達が小さいニャンコ先生も大きく化身した斑も同じ井上さんが声を使い分けて演じているんだということを、絶対嘘だと言って信じてくれませんでした。
なので、Youtubeで井上さんが顔を出して二つの役柄を演じているシーンを見せてあげました。それでも違うって言い張ってました(笑)
ファンではない普通の人にはそれぐらい同じ声優さんが演じていることがわからないようです。

 

大森監督:
ヒノエが初登場する『五日印』(1期12話)というエピソードで、ニャンコ先生が小さくなったり大きくなったりするんですが、極小のニャンコ先生から、いつもの中間サイズ、特大のニャンコ先生まで、声を見事に使い分けてくれて、あれは本当にお見事でした。

 

丸川さん:
『夏目友人帳』の中でこだわったシーンはありますか?

 

大森監督:
こだわったシーンはたくさんありますが、一番は生活感でしょうか。
普通の生活、日常があるからこそ、夏目のように特殊な力によって差別を受けてしまう人がどう生きていくのか、まわりの生活がいつもと変わらずそこにあるというのを描きたかったんです。

夏目が成長していくにあたって大事なことは、まわりがいつもと変わらずにそこにある、ということだと思ったので。

その中で夏目自身がどう感じていくのか、どう決めていくのかを観ている人にちゃんと伝えたい、という点が一番こだわったところです。

 

『海月姫』 ©東村アキコ・講談社/海月姫製作委員会

 

丸川さん:
第 5期の祓い屋の会合(5期8話『歪みなき世界』)で、屋敷の部屋の中に差し込む光に反射する塵がとても印象的でした。

 

大森監督:

チンダル現象ですね。あれはあの回の演出(大城美幸さん)の発案なんじゃないかと思います。

『海月姫』のフリーマーケットの話(8話『ミリオンダラー・ベイビーズ』)の、天水館の物置を開けるシーンでもやりました。
この描写は昔から好きで、デジタルになってからやりやすくなりましたが、フィルム時代は実際に埃を2枚のセルに重ねて、その状態でぼかして撮影したりしていましたね。

 

丸川さん:
『デュラララ!!』に登場するセルティの着信音は「世界ふしぎ発見!」ですか?

 

大森監督:

それっぽいやつですね(笑)、もともと原作に描写があるんです。ただ、そのまま使うのは問題があるので、似た感じの別のメロディーになってます。
セルティは、自身が一番不思議な存在のくせに『世界ふしぎ発見!』が大好きで、毎週録画してまで観ているということで、着信音があれなんです(笑)

 

丸川さん:

『デュラララ!!』の ED(エンディングアニメ)は当時、ニコニコ動画等で別の作品のパロディが作られるほど人気が出ましたが、OP(オープニングアニメ)や EDを作る時にこだわったところや、作る上で閃いたエピソードはありますか?

 

大森監督:

毎回、曲に合わせてアプローチするので、その都度違いますね。
『夏目友人帳』は、シーズン毎に大枠のテーマを決めてシリーズを構成してますので、なるべくそれに合わせた格好になってます。と言っても、夏目が孤独だったところから、人やあやかしの仲間が増えていき、という基本コンセプトは毎回同じですが。

『デュラララ!!』の 1期の時は、OPもそうですが、「繋がる」をキーワードに発想していったので、あの形になってます。

成田良悟作品は一貫してそう言ったテーマが通底していますので、『バッカーノ!』の時から、OPは連続して繋がっていくキャラクター紹介物となってます。

成田さんがお好きだと言っていたガイ・リッチー監督の『スナッチ』へのオマージュです。

また、曲の間奏で前話回想を入れるのは、『蒼き流星 SPTレイズナー』の OPのオマージュで、あちらはその放送回のダイジェストを入れる、と言う形式でしたが、『バッカーノ!』と『デュラララ!!』では、海外ドラマのアバンタイトルの雰囲気を真似して、前話回想として入れてます。

話が複雑だし、各話で扱う要素が飛ぶので、その方が思い出してもらえるかな、と。でも、同じことばかりやってセルフパロディ化するのが怖いので、これらの手法は成田作品以外では禁じ手にしてます。

『海月姫』は東村アキコさんが映画好きで、原作でもサブタイトルを映画のタイトルから取っていたりしたので、映画のパロディをやってます。これも連続して繋がることを意識してますね。

『pet』に関してはアイディア出し程度で、OPもEDもGAKさんにお任せしました。

スケジュール的に私の手が付かなかったためです。なので、あれに関して好評なのは、GAKさんの成果ですね。

 

丸川さん:
チャルメラは?

 

大森監督:
『pet』の桂木の携帯の着信音ですね。あれに関しては著作権をクリアしているので、打ち込みで作ってそのまま使っています。

 

丸川さん所有の『夏目友人帳』DVDに記念のサインをする大森監督

 

丸川さん:
『夏目友人帳』の舞台を熊本の人吉にした理由は?

 

大森監督:

それは単純に、原作者の緑川ゆきさんの出身地だからです。アニメ化に当たって緑川さんの原風景を見ておきたい、ということでロケハンに行きまして、そのためです。

今となっては、と言う枕詞付きですが、人吉は素敵な場所なので、是非訪れて欲しいですね。土地柄もいいし、人も優しいです。(編集部注: このインタビュー取材は外出自粛要請の前に行われました。人吉に興味を持たれた方はコロナ渦が収束してからのご訪問をお願いします。)
私は 「原作者運」にとても恵まれていて、面白い原作者さんだったり、ものすごく喜んで観てくださる原作者さんだったり…
緑川さんもとても良い人で、人に対して気遣いのできる優しい方です。
最初にお会いしたときにこちらは男性 5人で伺って、矢継ぎ早にあれもこれもと質問攻めにしてしまったのですが、一所懸命質問に答えてくださいました。あとで聞いた話ですが、その日の晩に熱が出て寝込んでしまわれたとか。
緑川さんは、読者が心地よく楽しんでもらえるかを最善に考えている方なので、ヘタなものは作れないという気持ちで作りました。

先ほど話したお茶の間ドラマ的に観てもらおうというのも、ただ原作をなぞるのではなくて、観てくださっている方に楽しんでもらうための連続性を、ちゃんと作っていこうというのが根底にありました。

しっとりとして情緒的なただのいい話というのではなくて、アクションもあり、物語の躍動もあり、エンタメを志向されているだなというのが、絵コンテで分解していくとよくわかりましたし。
緑川さんも一緒にアニメを応援してくれて、仮に原作と違うところがあっても別のものですからとおっしゃって、ご自分のペースで原作を進められて、ことあるごとに宣伝もしてくれています。

苦手な筈のtwitterまで始めて、アニメ版の公式情報を積極的にリツイートもしてくださって、感激しました。
緑川さんに限らず他の先生方も、アニメ版に対する深い理解と応援をしてくださって、それがすごく私たちの力になっています。
私は新しい発想で一からモノ創りをするタイプではないので、原作者の方と原作を読んでいるファンの方に、原作の正しい映像化だと思ってくださると同時に新しい発見をしてもらえるように、というのが自分の中での一番大きなテーマです。

だから、原作者の方が一緒になって応援してくださるのが理想的で一番ベストな状態なんです。そういう原作者の方に支えられて今があります。

 

—– 最後に 5月にBlu-rayBOXが発売される『pet』について何か一言お願いします。

 

大森監督:

私自身が『pet』の原作ファンで、制作が決まるまで 15年かかりました。その間、いろいろなプロデューサーにアニメ化の話を持ち掛けてきました。
『pet』は、キャラクターの個性がちゃんと立っていて、お互いの関係性が非常に重要な話なので、絵的な濃さや飲み込み辛さがあったとしてもキャラクターの良さとか面白さとかが受け入れられて、続けて観てもらえる作品だと確信していました。
実際に twitter でも視聴者の反応はそのようなものでしたので、それに支えられて最後まで走り抜けることができました。Blu-rayBOXでも楽しんで観ていただけると嬉しいです。

そして、アニメをご覧になったら、ぜひ原作も読んでいただきたいと思います。原作が素晴らしいです。

 

—– 長時間にわたり、また、細部にわたり、たくさんお話しいただいて、ありがとうございました!!

 

 

 

 

TVアニメ 『pet』

2020年1⽉よりTOKYO MX、BS11、AT-X ほかにて放送

Amazon Prime Video にて日本・海外独占先行配信

 

Blu-rayBOX  5月20日発売決定!
https://pet-anime.com/animation/bd/

 

13話より ©三宅乱丈・KADOKAWA/ツインエンジン

 

【イントロダクション】
人の脳内に潜り込み、記憶を操る能力を持つ者達がいた。
人は恐れ、蔑み、彼らを「pet」と呼ぶ。
能力者である “ヒロキ” と “司” は特別な絆で結ばれていた。
彼らは互いに縛り合うことで、自身をも蝕むその力から脆く危うい心を守った。
『ただ、一緒にいたいだけ』
そんな彼らのささやかな願いを裏社会の組織“会社”は無情にも利用し、翻弄する。
歪んでしまった2人の“絆”がもたらす結末とは──?

 

 

13話より ©三宅乱丈・KADOKAWA/ツインエンジン

 

<スタッフ>
原作:三宅乱丈『ペット リマスター・エディション』(ビームコミックス/KADOKAWA刊)
監督:大森 貴弘
シリーズ構成:村井 さだゆき
キャラクター設計:羽山 淳一
アニメーションキャラクターデザイン:工藤 昌史
音楽:島 秀行
制作:ジェノスタジオ
製作:ツインエンジン

<キャスト>
ヒロキ:植田 圭輔
司:谷山 紀章
悟:小野 友樹
林:加瀬 康之
桂木:咲野 俊介
ジン:M・A・O
ロン:遊佐 浩二
社長:飛田 展男

 

(出演 大森 貴弘監督、インタビュワーモデル 丸川 有紀、撮影・編集 森川 創)

関連リンク:

アニメ pet/夏目友人帳/デュラララ!!/海月姫などを生み出した 大森 貴弘監督にロングインタビュー! (前編)
https://tanonews.com/?p=23452

待望の TVアニメ「pet」いよいよ 2020年 1月より放送開始!
https://tanonews.com/?p=21014
アニメ「pet」公式サイト
https://pet-anime.com
アニメ「夏目友人帳」公式サイト
http://www.natsume-anime.jp/
アニメ「デュラララ!!×2」公式サイト
https://www.durarara.com/
アニメ「海月姫」公式サイト
https://kuragehime.net/

大森 貴弘監督
https://twitter.com/t0mori

 

丸川 有紀
http://natu-mo.jp/models/aoyama/129
https://www.instagram.com/marumaru_cha/

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