「大腸劣化」対策委員会では、「大腸」の機能が衰えることで、全身の健康リスクが高まっている状態を示す「大腸劣化」の認知を広げ、毎日の生活のなかで対策に取り組んでいただくための活動を行っています。
2020年、ウイルス対策への意識は非常に高くなっています。
特に、これから迎える冬にかけては様々なウイルスの感染率が高くなる季節でもあります。
近年研究が進み、腸内細菌が棲む「大腸」から免疫力をアップさせることががわかってきました。
●ビフィズス菌が出す「短鎖脂肪酸」が免疫抗体産生を促す
腸内には、およそ 1000種類、40兆個もの腸内細菌が棲んでいるといわれています。
腸内細菌の中でも、体に有益な働きをしてくれる「善玉菌」の代表が「乳酸菌」と「ビフィズス菌」ですが、大腸に多く棲んでいるのはビフィズス菌です。
ビフィズス菌は、小腸で消化されない水溶性食物繊維やオリゴ糖といったエサを食べて「短鎖脂肪酸」を作ります。
乳酸菌はこの「短鎖脂肪酸」を作りません。
「短鎖脂肪酸」は免疫細胞を活性化させ、腸の粘膜で作られる免疫物質 IgA抗体の産生を促します。
この IgA抗体は、血管から全身を巡って様々なウイルスの体内侵入を防ぎ、感染症予防に大きく貢献しています。
つまり、免疫力をアップするには「ビフィズス菌」と「エサ」を一緒に摂り、大腸で「短鎖脂肪酸」を出すことが大切です。
●大腸から免疫力をアップするレシピ
「大腸」から免疫力をアップするレシピを医師で健康ソムリエの石原新菜先生監修のもと、栄養士の若宮寿子先生が開発しました。
「ビフィズス菌」を手軽に摂れるヨーグルトと、エサとなる食材を組み合わせたレシピです。
今年の冬は、ぜひ大腸・ビフィズス菌・短鎖脂肪酸を意識した食事を摂って感染症予防に努めましょう!
【レシピのポイント】
1.短鎖脂肪酸を作るビフィズス菌とエサをセットでとる
2.様々な食材から、様々な栄養を摂ること
3.日本人が古くから食べている「伝統食」「発酵食」を取り入れること
監修/イシハラクリニック 副院長石原 新菜 先生
クリニックでの診察の他、わかりやすい医学解説と、親しみやすい人柄で、講演、テレビ、ラジオ、執筆活動と幅広く活躍中。日本内科学会会員。日本東洋医学会会員。日本温泉気候物理医学会会員。二児の母。
レシピ開発/栄養士 若宮 寿子 先生
山脇学園女子短期大学食物科卒業。栄養士、日本栄養士会認定 食物アレルギー栄養士、
米国(NSF)HACCPコーディネーター、日本フードコーディネーター協会委員。
雑誌「赤すぐ」「妊すぐ」にて6年間妊婦食、離乳食を連載。大手企業にて社員への栄養指導、
さらには給食の栄養管理を行い、栄養改善における功績が評価され、東京都知事賞を受賞。
95年より若宮ヘルシークッキングスタジオを主宰し、ヘルシー料理教室を通じ食生活の大切さを伝えている。
◆根菜のスパイシーヨーグルトソース
レシピのポイント
ビフィズス菌(ビフィズス菌入りヨーグルト)+エサ(根菜・生姜)が同時に摂れるホットサラダです。
カレー粉をヨーグルトに加えることで、香りと色を楽しめるソースに。生姜は、加熱することで身体を温める力がアップするのでみりんと一緒に加熱します。
根菜は、食物繊維が多く、さらに体を温める食材です。
材料 (2人分)
かぶ …1個(120g)
にんじん …60g
ごぼう …60g
ブロッコリー…50g
<スパイシーヨーグルトソース>
ビフィズス菌入りヨーグルト…100g
生姜(みじん切り) …10g
A ニンニク(みじん切り) …2g
みりん …大さじ1
顆粒コンソメ …小さじ1
B マヨネーズ …20g
カレー粉 …小さじ1
作り方
① かぶは葉の付け根を少し残し皮をむき、6等分のくし形に切る。
にんじんは厚さ5mmの斜め切り、ごぼうは小さめの乱切りにする。
② 耐熱皿に①を盛り、ラップをかけ600wのレンジで6分加熱する。
③ ブロッコリーは小房に分け、ラップで軽く包み、600wのレンジで 1分加熱する。
④ 耐熱ボウルにAを入れ600wのレンジで40秒加熱したら、
Bおよびビフィズス菌入りヨーグルトとよく混ぜる。
⑤ 1と2を皿に盛り合わせ、④のソースを添える。
◆サーモンの味噌ヨーグルトソース
レシピのポイント
ビフィズス菌(ビフィズス菌入りヨーグルト)+エサ(なめこ)を合わせたソースに、魚の中でもビタミンD含有量がトップクラスのサーモンを合わせました。ソースには、同じ発酵食品の味噌も加えて塩分・旨味を活かします。加熱したなめこを加えると、とろみのあるソースになります。
材料 (2人分)
サーモンの切り身…2切れ
塩、こしょう …各少々
小麦粉 …適量
オリーブ油 …大さじ1
<付け合わせ>
ベビーリーフ …適量
ミニトマト …4個
<味噌ヨーグルトソース>
ビフィズス菌入りヨーグルト…100g
なめこ …15g
薄口しょうゆ …小さじ2/5
水 …小さじ1
味噌(信州味噌)…小さじ1
塩、こしょう …各少々
パセリ(みじん切り) …少々
作り方
① サーモンの両面に塩、こしょうを振り10分おき、小麦粉を全体にまぶす。
② フライパンにオリーブ油を中火で熱し、①のサーモンを両面こんがり焼く。
③ 耐熱容器になめこと、Aを入れ600wのレンジで40秒加熱する。
④ ボウルにビフィズス菌入りヨーグルト、B、③の煮汁を入れよく混ぜる。
⑤ 皿に②のサーモンを盛り④のソースをかけ、③のなめことパセリを散らす。
ベビーリーフとミニトマトを添える。
■石原新菜先生が語る「感染症対策のために覚えていてほしいこと」
●感染症流行のピーク、冬は「免疫力」が大腸
冬はインフルエンザやノロウイルス、マイコプラズマ肺炎など様々な感染症が流行しやすい時期です。
代表的な感染症であるインフルエンザの流行は、毎年 1~2月がピークと言われています。
その要因として「気温の低下」と「空気の乳燥」があります。気温が低下すると、体温や血行も低下します。
体温が 1度下がると「免疫力」は 30%も下がってしまいます。
そして空気が乳燥すると、体内では粘膜も乳燥し、防御機能が落ちてウイルス増殖の原因となります。
さらにウイルスが浮遊しやすくなり、周囲に広まってしまう上、その生存期間も延びてしまいます。
こうして外的要因と内的要因が揃った状況では、ウイルスが活動しやすくなってしまうのです。
しかし私たちの体には、ウイルスなどから防御する力が備わっています。
それが「免疫力」です。免疫細胞にはいろいろな種類があり、体内に侵入した細菌やウイルスを食べたり、攻撃して無力化させたり、病原体に対抗するための武器となる抗体を作ったりして私たちの健康を守ってくれています。
実はこの免疫力は、生活を工夫することによって自分自身でアップさせることが出来るのです。
この冬、感染症から身を守るには、まず自らの免疫力のアップが重要となります。
●免疫と「大腸」の関係
外からの病原菌が入り込みやすい腸には、免疫細胞の 7割が存在しています。
さらにそこに棲んでいる腸内細菌も、免疫機能に大きく関係していることが最近の研究でわかってきています。
腸内細菌は約 1000種類、40兆個以上も存在しますが、その大部分は「大腸」に棲んでいます。
「大腸」は消化管の最後の器官で、口から一番遠い位置にあることから、酸素が一番少ないところです。
腸内細菌は酸素があると生きられないものが多いので、大腸はとても棲みやすい環境なのです。
腸内環境はバランスが大腸だと言われますが、大腸の腸内環境が整っていると、免疫機能も働きやすい状態になります。
●抗体産生に関わる「ビフィズス菌」の役割
「大腸」に棲む腸内細菌といえば、「ビフィズス菌」です。
ビフィズス菌と腸酸菌はどちらも腸内では善玉菌を代表する菌ですが、実はまったく違う種類の菌です。
ビフィズス菌の主な棲みかは大腸、乳酸菌の主な棲みかは小腸なのです。
もうひとつ、乳酸菌とは違うビフィズス菌の大きな特徴は「短鎖.肪酸」を作ることです。
短鎖脂肪酸はビフィズス菌などの善玉菌が生み出す代謝産物で、悪玉菌の活動を抑制する働きをします。
最近の研究では、短鎖.肪酸がウイルスの侵入を防ぐ重要な働きをする「IgA抗体」を作る手助けをすることもわかってきました。
ちなみに日本人のお腹の中には、ビフィズス菌が多いと言われていますが、ビフィズス菌は加齢や生活習慣の乱れ、ストレスなどによって減ってしまうことがわかっています。
そのため、ビフィズス菌を摂るなどして増やす工夫をすることが重要になります。
ビフィズス菌を摂るための方法として、多くの人はヨーグルトを思い浮かべるでしょう。
しかしヨーグルトの中には、ビフィズス菌が入っているものと入っていないものがあります。
お買い物の際には、表記をチェックした上で選んでみてください。
●ビフィズス菌の働きを活性化する「エサ」
ビフィズス菌などの善玉菌は、大腸で「エサ」を食べることによって増えたり、活動が活発になったりします。
エサになるのは水溶性食物繊維やオリゴ糖です。
IgA抗体を作るサポート役の短鎖.肪酸も、善玉菌がエサを食べることによって.生されるのです。
水溶性食物繊維は根菜、きのこ、海藻、大麦などに含まれ、オリゴ糖ははちみつなどに含まれています。
●この冬、「ビフィズス菌」と「エサ」で「大腸」から免疫力アップを目指す!
腸内細菌が主に棲んでいるのは大腸です。
その大腸で有益な働きをする善玉菌の代表がビフィズス菌。
ビフィズス菌は免疫に重要な短鎖脂肪酸を出します。
ビフィズス菌とそのエサは一緒に摂ることが、効果的に働くポイントです。
具体的な摂取方法としては、ビフィズス菌入りヨーグルトに調味料やスパイスをまぜてソースとして使うと、根菜やきのこなどのお料理にもよく合い、おすすめです。
体を温めてくれる食材や、他の発酵食品などと組み合わせると、冬の免疫力アップも期待できます。
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■全国の100歳以上の長寿者は50年連続で増加中
世界保健機関(WHO)が 2018年に発表した統計によると、男女の平均寿命のランキング 1位は日本で、84.2歳。
2018年時点で日本は世界一長生きの国となっています。
また、2020年9月15日の厚生労働省の発表によると全国の 100歳以上の長寿者が過去最多の 8万450人となり、初めて 8万人を超えました。
昨年から 9176人増え、50年連続で増加しています。
長期間、100歳を超える方が増え続け、世界でも 1番の長寿国となっている理由はどこにあるのでしょうか。
理由は様々ありますが、その理由のひとつは、“ビフィズス菌”であると考えられています。
国別ビフィズス菌の比率 出典元: DNA Res.;23,125-32,2016
善玉菌の代表であるビフィズス菌ですが、日本人男女 106人を含む、12ヶ国 861人の腸内フローラのメタゲノム解析により、日本人はビフィズス菌の比率が平均 17.9%を占め、欧・米・中国等の人と比較して、突出して高いことが分かっています。
善玉菌の代表であるビフィズス菌は、“短鎖脂肪酸”を産生することで、悪玉菌を抑制し、腸内フローラを整えます。
この短鎖脂肪酸を作り出すビフィズス菌の働きが、長寿に影響していることが推測されますが、岡山大学大学院 環境生命科学研究科の森田英利教授の研究でその裏付けとなるような興味深い結果が明らかになりました。
岡山大学大学院 環境生命科学研究科 森田英利 教授
岡山大学大学院自然科学研究科博士課程修了。
1991年 米国ミネソタ州立大学ポスドク。1992年 麻布大学獣医学部の助手、2010年 同大学の教授を経て、2015年から現職。腸内細菌学会広報委員、日本乳酸菌学会評議員。
■長寿の島「奄美群島」の長寿者の腸内環境から見えてくる長寿の秘訣
森田英利教授とその研究グループ(全薬工業株式会社、医療法人徳洲会)は、日本人長寿者の腸内細菌叢を解析し、その特徴を明らかにするため、長寿で有名な奄美群島に着目しました。
奄美群島は、百寿者人口が人口 10万人あたり 136.75人(※)で、これは全国平均の約 3倍の数字です。
さらに、これまでに 3名もの世界最長寿者が誕生しているまさに長寿の島です。
森田英利教授は、奄美群島地域長寿者 44名(女性 40名、男性4名 / 平均年齢 98.3歳)を対象に腸内細菌叢の解析を行いました。
(※全国平均48.45人 / 10万人)
その結果、奄美群島の長寿者の腸内細菌は、全国平均と比較して多様性に富んでおり、中でも「ビフィズス菌」、「アッカーマンシア属」、そして古細菌である「メタノブレビバクター属」が多いことが分かりました。
■一般的に「ビフィズス菌」は加齢によって減少
光岡ら 日本の科学と技術 1976を改変
ビフィズス菌の割合
東京大学の光岡知足名誉教授の培養法を用いた研究によると、腸内細菌のバランスは加齢に伴い変化し、特にビフィズス菌は成年期以降から大きく減少しています。
しかし、奄美群島の長寿者の腸内細菌叢にはビフィズス菌などが多く棲んでいることが分かりました。
また、寝たきりなど、健康状態が悪化するとビフィズス菌などが減少することも判明しました。
ビフィズス菌とともに奄美群島の長寿者の腸内細菌叢に多い、アッカーマンシア属は、糖尿病患者やメタボリックシンドロームの人には少ないと報告されています。
メタノブレビバクター属については、比較的に欧米人に多い古細菌で日本人にはほとんど検出されません。
また、炎症性腸疾患患者の人には少なく、肥満の人のエネルギー吸収を減らす可能性が報告されています。
奄美群島長寿者の腸内細菌の解析により、「ビフィズス菌」をはじめ、「アッカーマンシア属」、「メタノブレビバクター属」といった健康長寿との関連が示唆される菌が多く、さらなる研究が期待されます。
■長寿者の腸内フローラをつくるのは奄美群島の伝統食?
奄美群島の伝統食を調べてみると、ミキやそてつ味噌、パパイヤの味噌漬けなど、善玉菌の多い発酵食品と菌のエサとなる水溶性食物繊維を組み合わせた食が多いことが分かりました。
「ミキ」は、おかゆとすりおろしたサツマイモ、砂糖で作る発酵飲料です。由来は神様に捧げる「お神酒」と言われており、栄養価が高く、消化に負担がかからないことから、赤ん坊から高齢者まで、幅広く愛飲されています。
奄美群島の伝統食を食べる機会はあまりないかもしれませんが、善玉菌の多い発酵食品とそのエサとなる水溶性食物繊維を組み合わせた食事は、意識すれば毎日でも摂ることが可能です。
「大腸劣化」対策委員会 https://daicho-rekka.jp/
(情報提供:「大腸劣化」対策委員会 編集:森川 創)