2019年に「ワイン県」宣言をした山梨県は、ワイン生産量・ワイナリー数ともに日本一の県です。
ワイン造りにおいても “持続可能な開発” に取り組んでいる企業やワイナリーと共に歩んでいます。
そんな「ワイン県」ならではの SDGsの取り組みを順を追ってご紹介します。
■ワイン県やまなしについて
山梨県は、日本ワイン発祥の地であり、その生産量・ワイナリー数は日本一を誇る日本を代表するワインの生産地です。
山梨県のワイナリーは早くから日本固有品種のぶどう「甲州」(白)や「マスカット・ベーリー A」(赤)を育てることに力を入れ、ワインの完成度を高めてきました。
近年、その動きはさらに加速し、山梨県内の地域・畑ごとに素晴らしい香味を感じさせるワインが続々と誕生しています。
今や世界のコンクールでも数々の賞を受賞するなど、注目を集めています。
日本ワインの評価が世界的に高まっているいま、山梨ワインのさらなる発展を図るため、 山梨県では 2019年 8月に山梨「ワイン県」を宣言しました。
“日本ワインといえば山梨” というブランドイメージを更に発展させるため、山梨ワインの多様性や山梨ならではのワインの楽しみ方を伝え、山梨ワインの高付加価値化に取り組んでいます。
■ワインの搾りかすとぶどうの剪定枝で作る “SDGs有機肥料” で二酸化炭素を削減
有機肥料作りの様子。
南アルプス市でマスカット・ベーリー Aを中心に希少な赤ワインを造る小規模ワイナリー「ドメーヌヒデ」では、ワインの搾りかすとぶどう枝の炭から有機肥料作りを行っています。
そのままでは酸性が強いワインの搾りかすを中和させるため、アルカリ性のぶどう枝の炭を混ぜ、良質の肥料にしています。
炭化させることで二酸化炭素削減になり、毎年大量に出る剪定枝(庭木・果樹を剪定した後に出る枝)の二次利用にも繋がる “SDGs有機肥料” で、畑から出たものを畑に戻す循環型の農業を実践中です。
このような循環型の農業を「4パーミルイニシアティブ」といいます。
4パーミルイニシアティブとは、1年間で土の中の炭素量を 0.4%(4/1000)増やすことができれば、人間による大気 CO2の増加量を相殺し、温暖化を防止できるという考えに基づいた国際的な SDGsの取り組みです。
日本では山梨県がトップランナーとしてリードしています。
果樹王国・山梨県の特性を十分に活かし、果樹園内で剪定枝を炭化・貯留して温暖化を抑制するとともに、「環境に配慮した農作物」として新たにブランド化し、 商品の付加価値を向上することで導入を進めています。
「ドメーヌヒデ」は、ワイナリーでは県内第 1号の「4パーミルイ ニシアティブ」認証ワイナリーとして申請中です。
畑がある南アルプス市は年間降水量が少なく、「月夜にも灼ける」と言い伝えられているほど雨が降らない乾燥地帯です。
オーナーの渋谷英雄さんは「日本ワインの作り手の 100人」にも選ばれ、また環境省登録の環境カウンセラーとしても活動している人物です。
■年間 10,000t以上廃棄処分されるワインの絞りかす「ワインパミス」を食品・化粧品に!
ワインパミス
ワインパミスとは、主にワインの醸造工程で残るブドウの皮や種などのことです。
県内だけでも年間 10,000t以上を廃棄処分していたワインパミスに着目し、ワインパミスを原料としたペーストやパウダーを山梨県で開発しています。
ポリフェノールはワインの 2〜 6倍、ワインには移行しないオレアノール酸という栄養成分も含まれているなど、ワイン以上の可能性をワインパミスは秘めています。
料理や食品だけでなく化粧品やサプリメントにも加工しやすい状態にすることで、廃棄処分していたワインパミスが循環型社会の新たな資源になるよう取り組んでいます。
ワインパミスシャンプー
ワインパミスジャム
・ワインパミスを取り扱う会社:株式会社中村商事の事業活動例
1 化粧品・サプリメント原料
毛髪にハリ・コシを与える成分に着目した 「ワインパミスシャンプー」や「ワインパミストリートメント」ほか、化粧品やサプリメントを開発。
2 食品添加物
ワインパミスをワイナリー別、また葡萄の品種ごとに仕分け、ペースト状やパウダー状に加工。
「カベルネソーヴィニヨンのカレー」や「甲州種のクッキー」などワイン好きの方に銘柄を選べる楽しさを提案。
3 エコフィード
ワインパミスを与える事で、 鶏はポリフェノールを含む玉子を産むほか、 牛・豚・羊は糞尿の臭いを軽減。
今後は養魚サーモンなど多様な家畜でのテストも予定。
4 染料
ワインの品種ごとに色合いが違う特性を活かし、山梨県の伝統工芸である和紙で名刺を作成。(洋服の染色も今後予定)
5 バイオ燃料
ワインパミスを蒸留しアルコール濃度を高め、また微細藻類(植物プランクトン)をパミスで培養し油を抽出。
■日本酒の副産物をブドウ畑に活用
笹一酒造のワイン醸造用自社畑。化学肥料を使わないオーガニックな栽培を行っています。
山梨県東部の「郡内」エリアにあり、日本で唯一日本酒とワインを造っている日本酒蔵「笹一酒造」では、地元山梨県産米を自社精米した過程の副産物「米ぬか」をブドウ畑の肥料として二次利用しています。
自然由来の肥料として活用することによって環境に配慮した栽培方法です。
五代目当主の天野怜さんは、「笹一酒造は日本酒造りとワイン造りに本気で取り組み、山梨ならではの酒文化とそこに融合された手造りの高品質な酒造りをしています。」と話しています。
350年以上続く日本酒造りで育まれた醸造技術と、山梨の歴史あるワイン造りの伝統技術が融合された笹一酒造ならではのサスティナブルな取り組みを行っています。
■景観・産業文化の継承
老舗からマイクロワイナリーまで多種多様な約 90のワイナリーがある山梨県は生産量・ワイナリー数ともに日本一を誇っており、 「ワイン県」ならではの特色ある緑豊かな景観と日本ワイン造りの歴史と文化を大切にしています。
特にワイナリーの多い勝沼エリアなどでは、美しいぶどう畑が広がり「ワイン県」に来たことを訪れた人に実感させます。
近代産業遺産「宮光園」では日本ワインの醸造の歴史を学ぶことができるほか、隣接する「シャトー・メルシャン ワイン資料館」は、 現存する日本最古の醸造場が資料館になっており、「現存する最古の日本産ワイン」も収蔵されています。
ソムリエ試験を直前に控えた受講生も多く訪れるこの地の魅力を次世代にも引き継げるように、官民が一体となって様々な取り組みを行っています。
(情報提供:ワイン県やまなし PR事務局 編集:R.T.)