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2021.10.21科学・Tech

オートファジーは経済も活性化できるのか? 細胞再活性化研究の社会実装化への期待

オートファジーをはじめとした世界基準での『細胞再活性化(細胞ケア)』市場は、重要かつ注目の分野でもあることから、創薬や食品素材に関する社会実装化の動きも加速しています。
前回の記事に続き、今回は『細胞再活性化』が社会にどのような影響を及ぼすのか、健康意識の変化や期待されることについて説明します。

 

登壇者の皆様

 

細胞再活性化(細胞ケア)によるビヨンドエイジング

 

従来のアンチエイジングは対症療法でしたが、細胞の機能が低下している状態で栄養を与えても根本的な解決にはなりません。
その細胞の機能を維持するのに重要であるオートファジーは、細胞内部の新陳代謝と有害物の除去を通して細胞の健全性を保つシステムです。人間は加齢によって細胞の機能が低下して老化が起きます。
老化は昔は不可逆的な現象だと言われていましたが、現在の生命科学では不可逆的ではないというのが世界的な潮流になりつつあります。

 

 

細胞ケアの社会実装における展望と期待

 

このオートファジー分野の基礎研究は日本が世界をリードしているのですが、特許などの知財に関しては諸外国に先を越されている状況です。
オートファジー以外の分野でもしばしば起こっていることですが、基礎研究ではリードしているのに、社会実装の段階になると違う国に持って行かれてしまうのは非常にもったいないことです。
そこでオートファジーの社会実装化の為に設立されたのが、株式会社 AutoPhagyGO(オートファジーゴー)です。

 

 

AutoPhagyGOはオートファジーを活用して生活者の健康長寿を実現することをミッションとして発足しました。
基礎研究の他、創薬の研究や、UHA味覚糖社の「オートファジー習慣」、協和社(フラコラ)の「ウロリチンカプセル」などの共同研究によるサプリメント開発も行われています。

 

現在、オートファジーの正確な測定には 3つの各ステップで高度なノウハウが必要です。
AutoPhagyGOはこれを独自のアッセイにより、素材開発などを目的としたオートファジー活性測定、オートファジー機能解析を商業活用レベルに昇華し、サービスとして提供している唯一の会社です。

 

 

また、産学官の連携、オートファジーの産業活用や良質なイノベーション・エコシステムの構築を推進するために設立されたのが、一般社団法人 日本オートファジーコンソーシアムです。
一社の営利の為ではなく、オートファジーを使った産業が世界的に展開していく為の基盤づくりにフォーカスした活動を行っています。
約 50名のアカデミア会員に加えて、企業側の実用化にむけての期待も高く、海外企業を含む十数社がすでに会員に名を連ねており、オートファジーの普及・啓蒙活動や生活者が製品を安心して選べるような基準づくりも進めています。

 

 

実践企業 株式会社ダイセル「機能性腸内代謝物・ウロリチンの工業生産技術」

 

ダイセルは、ザクロ由来のポリフェノール・エラグ酸から、オートファジーとサーチュインに働きかける「機能性ポリフェノール・ウロリチン」を選択的に生産する工業化・製品開発に成功しました。
ヒトの腸内では、腸内細菌の働きでエラグ酸を発酵させて、ウロリチンがつくられます。このように腸内で起こっていることを、体外の発酵タンクで再現したのです。発酵法によるウロリチンの工業生産は世界初の技術であり、それによる製品も世界初のことです。

 

 

最新エビデンスとして、細胞ケアの全身への影響が期待できる血管に着目し、血管内皮機能のヒト試験を行いました。
摂取から 8週後にウロリチン 10㎎摂取群で FMDの上昇傾向がみられたことから、血管内皮の改善傾向が確認できました。
また、ヒトへのウロリチンの安全性試験も実施し、10mgおよび 50mgの 12週間摂取で毒性所見がないということで、安全性も確認できました。

 

 

実践企業 UHA味覚糖「サプリメントによる細胞再活性化の一般化」

 

UHA味覚糖は、近年ではグミ剤サプリメントを始め、医薬品で使われる技術を応用した食品を展開しています。
これまでのサプリメントは、アンチエイジングと同じように、身体の不足栄養素を補うという切り口で作られていたものですが、栄養素を補っても身体が栄養素を活かすことができなければ意味がありません。
そこで加齢により低下する機能を補う新たな研究開発テーマとして「オートファジー」に着目。世界的な研究分野である「細胞再活性化」による健康領域へ新たに挑戦しています。

 

 

オートファジー機能を活用した細胞ケアによる健康長寿は、サプリメントとしても新しい基軸であると考え、2017年より吉森教授と共同研究を進め、2019年からは株式会社 AutoPhagyGOと共同研究開発を開始。
共同開発第一号商品として、オートファジーの概念を活用した初のサプリメント「オートファジー習慣」の発売に至りました。

 

“医療費削減”という後ろ向き発想から“消費市場拡大”という前向き思考へ

ビヨンドエイジングは、「医療にかかる費用を減らす」という後ろ向きの“治療・予防”思考から、「消費拡大による経済活性化」というポジティブな“老化抑制”思考へ変わる可能性があります。
老化抑制をターゲットにすることで、個々の病気を根絶するよりも潜在的に大きな経済的利益をもたらす、と考えられています。

 

ある調査では「皆さんはどれくらい長生きしたいですか」という質問に対し、「いつまでも長生きしたい」と回答をした人は少ないという結果が出ました。今後の生活に不安が多いという理由が多いそうです。
しかし、健康寿命が延びれば様々な活動を行うことができ、前向きな気持ちになる人が増えて、経済活動が活発になることが予想されます。
老化は不可逆的ではなく回復可能なものであることが認知されていけば、市場はどんどん広がりそうですね。

 

 

老化は 20代から進んでいる! 老化抑止のスタートは早ければ早いほどいい

 

26歳から 38歳までの観察を行った研究では、若くても老けて見える人は、身体の内側も老けていることが実証されました。

 

1972年から 1973年に生まれた NZダニーデン在住の 943人を 26歳から 12年間追跡した研究で、18の指標について 26歳と 38歳時を比較すると、同じ 38歳でも生物学的年齢には 20歳以上の差が生まれ、身体の体内が老けている人は、見た目も老けていることがわかりました。
その後、45歳までの 20年間をかけて観察を行ったデータでは、生物学的老化度の個体差はさらに拡大しました。
老化のペースが最も遅い研究メンバーが 1年に 0.40生物学的に老化したのに対し、最も早い研究メンバーは 1年に 2.44、つまり約 2.5歳分年を取っていたことが判明しました。
老化のペースが速い者では、脳の平均皮質厚が薄く、皮質の総表面積も小さく、視覚面や聴覚面でも明らかな老化が確認されました。

 

このような結果から、細胞の老化抑止は早く始めるほど健康寿命が長くなり若々しい容姿でいられることが推測されています。
そろそろ年だから老化対策を始める、ではなく若いうちから対策を始めた方が良いですね。

 

 

細胞を活性化する素材に、世界が注目! アンチエイジングのターゲットは細胞!

近年の美容キーワードともいえるのが、細胞再活性化とその代表的な手段であるサーチュインとオートファジーです。
シミ・シワ・たるみといった、年齢を重ねるごとに増えてくるエイジングの悩みに、しっかり応えるスキンケアとして、サーチュイン、オートファジーの研究成果を活用した製品が続々と登場しています。
美容クリニックでも医師の監修のもと、サーチュイン遺伝子の活性化に働く NMNサプリが処方されるようになってきました。
今や見た目のアンチエイジングも、細胞から健やかにする時代が来ようとしています。
オートファジー、サーチュインの両方を活性化するウロリチンが実用化されることで更に細胞再活性化への注目が高まりそうです。

 

 

世界市場を狙える、日本の新産業としての期待

 

オートファジー分野の社会実装化において日本はまだ遅れを取っている状況ですが、まだ十分巻き返すことができると考えられています。
ベンチャーやコンソーシアムの設立により、研究者を始め、産業界の有力な企業、経済産業省の協力も入り、システムが整いつつあります。
基礎研究から社会に出せるまでの実用化、そして一般の人々に届けるための製品化まで、そう遠くはないかもしれませんね。

 

(情報提供:ウェルネス総合研究所、編集:中嶋杏樹)

関連リンク:
株式会社 AutoPhagyGO 公式ページ
https://autophagygo.com/