たんぱく質というと、従来の筋肉を維持増進するために必要なものと考えられていましたが、最近は、免疫や脳、神経や細胞などヒトの身体の根本として隅々で多くの機能を左右する重要な栄養素であるという考え方へと変わってきました。
また、たんぱく質の摂取は、アスリートや運動習慣のある方だけでなく、美容や健康のために積極的に食事時に取り入れられるようになりつつあります。
今回は、たんぱく質の正しい知識、日常生活での手軽な摂取方法について、立命館大学 スポーツ健康科学部の藤田 聡先生と、楽しいニュースでは、久しぶりにご登場の日本獣医生命科学大学 佐藤 秀美先生にわかりやすく解説をしていただきました。(記事1、記事2)
立命館大学 スポーツ健康科学部の藤田 聡先生
藤田 聡先生 講演テーマ「筋肉だけでない、たんぱく質の生理機能とその付き合い方」要旨:
5大栄養素の1つのうちのたんぱく質は、エネルギーのもとになり、カラダを作るもとになります。
食事で摂取されるとアミノ酸に分解されて、カラダの各組織でたんぱく質を合成します。
空腹時には、カラダの組織が分解されてエネルギーとしても消費されてしまうため、供給し続ける必要がある栄養素です。
骨は、カルシウムとコラーゲンで構成されています。
鉄筋コンクリートでたとえるなら、コンクリートがカルシウム、鉄筋がコラーゲンに該当します。
カルシウムだけでなく、たんぱく質の1つであるコラーゲンが不足すると骨が折れやすくなってしまいます。
肌では、真皮の部分に肌の柔らかさに貢献するコラーゲンや弾力性を維持するエラスチンがたんぱく質が重要となります。
神経伝達物質である、ドーパミン・セロトニン・グルタミン酸・GABA・グリシン・ノルアドレナリンは精神的な安定・維持に重要なもので、これらの物質もアミノ酸をしっかり摂っていないと生成できません。
筋肉が少なくなり、サルコペニアやフレイルという状態がありますが、基礎代謝を維持するためには、筋肉が重要となります。
その筋肉を構成するために、たんぱく質が必要となります。
加齢とともに筋肉量が減っていきます。太ももの太さが体全体の筋肉量に関係していると言われています。
太ももの筋肉量が低いと内臓脂肪が多くなり、また、糖尿病の発症リスクが高まります。
免疫細胞という観点でもたんぱく質は重要です。
例えば、たんぱく質が少ない人は、ワクチンを打っても抗原を作りにくい状態にあり、結果として、インフルエンザにかかりやすくなります。
全世代を通して、たんぱく質摂取目標量を約 7割の人が摂取できていないという調査結果もあります。
1日あたりの摂取量だけでなく、朝食・昼食・夕食でバランスよく摂取する必要がありますが、実際には、朝食で摂取できてないという調査結果があります。
特にロイシンの濃度が高くなればなるほど、食後のたんぱく質の合成が高くなるという調査結果があります。
牛乳・ヨーグルト・プロセスチーズのような乳製品にロイシンの含有率が高いです。
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日本獣医生命科学大学 佐藤 秀美先生
佐藤 秀美先生 講演テーマ「いつもの食事を高たんぱくに!日常生活のひと工夫」 要旨:
日本人の健康寿命は、男性は 72.7年、女性は 75.4年で、平均寿命よりも 8.9~12.3年も健康ではない期間があります。
カラダの中から骨なら1年半で、腸・膵臓・腎臓なら約 10日で半分が新しい組織に入れ替わります。
その入れ替わりには、たんぱく質が重要となります。
たんぱく質を摂取すると、まずは生命維持に必要な部分で使用されます。
70代と 20代の栄養素の摂取比較をすると、たんぱく質を含め全体の栄養素を 70代のほうが多く摂っています。
伝統的な日本人の食事構成である 一汁三菜に、戦後欧米から取り込まれた肉類・果物・乳製品が加わり、日本人が世界一の長寿になりました。
実際にどれぐらいたんぱく質を摂ればよいかというと、高校生も高齢者も各世代ともに必要量は 0.7グラム程度で、同じですが、加齢により心身が老いたフレイルを予防するには、1.2グラムの摂取が推奨されています。
ただし、体重によっては、それ以上のたんぱく質の量が必要な場合もあります。
国民健康栄養調査によると、高齢者は、フレイルの最低限の量は摂取できていても、十分な量は摂取できていないことがわかりました。
小さじ1杯のたんぱく質量が多いもののリスト
高齢者がたんぱく質量をもっと増やすには、今の食事に粉を「まぜる」「かける」といったやり方で補給をオススメします。
具体的なメニューを紹介します。
麩を入れると卵焼きがふんわりします。
肉じゃがに粉ゼラチンを入れると、味を変えずにたんぱく質を増やすことができます。
鰹節粉を入れると、うま味成分があるため減塩にもつながります。
料理をするのがめんどうという場合には、ヨーグルトに黄な粉を入れたり、味噌汁に鰹節粉を入れるだけでもたんぱく質を増量することができます。
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ウエルネス総合研究所:
人生 100 年時代を迎えたいま、健康寿命を延ばし、豊かな人生を送ることへの社会的関心はますます高まっています。
私たちウェルネス総合研究所は、独自の視点で健康・ウェルネスに関する情報の収集・集積・発信をしてまいります。
URL: https://wellness-lab.org/
(情報提供: 一般社団法人ウェルネス総合研究所、編集: 森川 創)
関連リンク:
食物学 佐藤 秀美先生が伝授! 野菜で美容と健康を手に入れよう!(前編)
https://tanonews.com/?p=22638
食物学 佐藤 秀美先生が伝授! 野菜で美容と健康を手に入れよう!(後編)
https://tanonews.com/?p=22685