※こちらの記事は LGBTQに関連する内容が含まれていますが、アダルトコンテンツではありません。(編集部注)
電子コミックサービス「LINE マンガ」で、今注目されているオリジナル作品『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』の著者 練馬ジムさんに独占インタビューしました。
「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」:
https://manga.line.me/product/periodic?id=Z0001125
©Zim Nerima/LINE Digital Frontier
ストーリー
沖田誠 48歳。世間の常識・偏見で凝り固まった彼には“最近の若者”が理解できない。
上司にお茶を注がない女性、メンズブラ愛用の部下、そして引きこもりの息子…。
そんなある日、ゲイの青年・大地に出会う。 初めてのセクシュアリティに思わず拒絶してしまうが、次第に彼の魅力に気付き、友達になることに。
そして知る、「その人の趣味や指向を他人が干渉するのはナンセンスだ」と。
そう正に、おっさんのパンツがなんだっていいように!“人として”の成長を誓うおっさんは、無事に“自分の中の常識”をアップデートできるのか!?
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『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(以下、『おっパン』)という作品名と、練馬ジムさんというお名前から、勝手に男性と思い込んでいましたが、実は、ネーム担当は、シシ先輩さん、作画担当は、シッチさんという女性二人で著されていらっしゃいました。
練馬ジムさん
お顔の公開は NGということで、プロフィールのイラストでのご紹介となります。
実際のお二人は 20代のようにお若く見える方々でした。
—– はじめに、子供時代からお聞きします。どんなお子さんでしたか?
シシ先輩さん:
口達者で、よくウソをつく子と言われて、ボーッとして忘れ物も多く、やんちゃな子供でよく近所の崖を登っていました(笑)
—- え? 崖ですか?
シシ先輩さん:
はい、埼玉西部の山を切り拓いたところにあった団地に住んでいたので、崖が多くて登って遊んでいました(笑)
一人で絵を描いて遊ぶことが多く、学生時代は通学に片道2時間ぐらいかかったので、いろいろなことを空想しながら通学していました。
—– 子供の頃に影響されたものはありますか?
シシ先輩さん:
ディズニーのアニメやジブリのアニメを観ていました。
母や兄がマンガをよく読むので家にはマンガがたくさんあって、少年マンガ、たとえば、『うしおととら』(小学館)、『寄生獣』(講談社)、『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)を読んでました。
同年代の少女が読むようなマンガは読んでなかったです(笑)
—– シッチさんの子供時代はどうでしたか?
シッチさん:
私は、シシ先輩とは違って、ずっとインドア派で、3・4歳の頃から一人でテレビゲームをやっている子供でした。
友達と遊ぶというよりも、一人で絵を描くのが好きでした。小学校 1年生の頃にセーラームーンが好きだったので、絵をマネして描いていたのが、初めてマンガを描いた思い出です。
友達にも上手だねと褒めてもらっていました。
高校時代は軽音楽部に入っていたのですが、美術部の先生に誘われて、軽音楽部から美術部に移りました。
美術部では、油絵とデッサンをやっていました。
当時は、マンガもよく描いていましたが、ストーリーを考えるのが得意ではなかったので、漫画家になろうとは思っていませんでした。そこからデザイン系の専門学校に進んで、インテリアデザインの勉強をしていました。
シシ先輩:
私の場合は、ゲームデザイン学科で漫画家コースがある専門学校に進みましたが、途中で辞めて、同人活動(同人誌の即売イベントに出展したり、同人作品の制作・発表を目的に、グループで活動すること)をしていました。
その頃に、アルバイト仲間の友達だったシッチに出会いました。
©Zim Nerima/LINE Digital Frontier
—– お二人はお互いにどういう印象でしたか?
シッチさん:
シシ先輩は、面白かったです(笑)
シシ先輩:
シッチは、絵が上手かったです(笑)
シッチが通っていた学校はデザインで有名な専門学校で、その学校に通っているということはめちゃめちゃ絵が上手いはずだから、絶対に友達になりたいと思っていました。話してみたら気が合ってすぐに友達になりました。
シッチさん:
二人とも好きなマンガやキャラクターが同じで、出会って2か月ぐらいで一緒に同人活動をするようになりました。
最初は一人ずつ別々にマンガを描いて、一緒の本にしていたのですが、私があまりにも話が書けなくて、シシ先輩に相談しました。
シシ先輩:
シッチのネーム(コマ割り)を見せてもらったら、基本的にコマが4個にしか分かれていないページがずっと続いていて…(笑)
よかったら、私がネームを書こうか?っていうことになりました(笑)
逆に私は、自分が描く絵があまり好きではなかったので、シッチに「よかったら絵を描いてくれない?」とお願いするようになり、それ以来、それぞれが今の役割になりました(笑)
©Zim Nerima/LINE Digital Frontier
—– インタビューしていても仲が良いのがよく伝わってきますが、意見が合わないときはどうされていますか?
シシ先輩:
シッチは色塗りが地味なんです(笑)
たぶん地味で落ち着いたトーンが好きなんだよね?
私は派手目なものが好きなので、そこでは揉めます(笑)
シッチさん:
揉めたら、ちょっと1日時間を置いて、どっちがいいかもう一度見比べて、いいなと思うほうに決めます。
あるいは、ちょっとずつ意見を取り入れてその間(あいだ)をとります。
—– プロの漫画家になるきっかけは何だったのですか?
シシ先輩:
同人活動をしていたときに、編集さんに声をかけてもらって、それがきっかけでプロになりました。
©Zim Nerima/LINE Digital Frontier
—– 練馬ジムというお名前の由来を教えてください
シシ先輩:
その時にハマっていたキャラがボクサーで、練馬を拠点にしているキャラだったのです(笑)
ボクサーだからボクシングジムにしようということで、練馬ジムにしました。
それと、本屋さんで働いていた経験上、作者名は覚えやすいほうがよいということで、練馬だったら探してもらいやすいかなと。
—– これまでにどれぐらいの作品を手掛けられたのですか?
シシ先輩:
通算で 9作品を出しています。
シッチさん:
一番最初に手掛けた作品は、30代の先生と男子高校生のBL作品でした。
『おっパン』もおじさんと大学生の男の子の掛け合いから始まるお話で、なんかそういう組み合わせが好きなんだなぁって思います(笑)
©Zim Nerima/LINE Digital Frontier
—– その組み合わせが好きな理由は何かあるのですか?
シシ先輩:
先ほどお話ししたボクサーのおじさんは髭が生えているのですが…。当時の編集の方から BLでは髭のあるキャラクターは NGということで描かせてもらえなかったんです。
せめておじさんは描きたいという執着から、ずっとおじさんを描き続けています。
—– 現実のおじさんで誰かをモデルにしていたりするのですか?
シシ先輩:
実際のおじさんに憧れたりとかはなくて、あくまでも理想としているおじさんを描いています。
『アメリカン・ビューティー』という映画で、高校生の娘さんがいるお父さんが娘さんと同じ高校の一番可愛い女の子を好きになる、というストーリーで、今までモノクロだった男性の人生がバラ色になるという話がすごく好きでした。
年を取ってからでも好きな人ができるというのがとても面白いと感じました。
1日で人生が変わる、というのは恋愛なら可能なんだと。
—– 『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』という作品名にしようと思ったのはどういう経緯からですか?
シシ先輩:
名前にインパクトが欲しいと思っていて、かつ、わかりやすくもしたいと思っていました。
パンツは、みんな日常的に使うもので身近な存在ですが、それぞれに履き心地とかこだわりもあります。
二人でヨガ教室に通っていたのですが、更衣室に入ると、Tバックを履いている方もけっこういらっしゃって、日常でTバックを履く人がいることにびっくりしました。
それでよく見てみると、みなさん、Tバックの他にもトランクスやボクサー系などそれぞれいろんな下着を履いていらっしゃったので、私にとってはちょっとしたカルチャーショックでした。
普段の会話で、Tバックの話なんてしないですよね。
「Tバックを履いてる?」なんて聞かないし(笑)
シッチさん:
その人の心地の良いかたちを一番形容しやすいのがパンツということに行きつきました。
みんなが使っているもの、ということで、わかりやすく伝わればよいかなと思いました。
©Zim Nerima/LINE Digital Frontier
—- 『おっパン』をまだ読んでいない人へ、ご本人から PRしていただけますか?
シシ先輩:
少し話は逸れるかもしれませんが、コミケ(コミックマーケット)で女性向けジャンルの作品を出した時に、買いに来てくださる方の男女の比率が半々だったんです。
最初は男性が購入してくださることにびっくりしたのですが、その場で、「ここがよかった」とか感想を言ってくださって、とても嬉しかったです。
シッチさん:
(LGBTQに当たる方は)想像していたよりも多くいるし、すごく身近にいるし、特別なことではありません。
実際に当事者の方々と直に話をして、より強くそう感じるという経験を私たちはしました。
シシ先輩:
そんな体験をこの作品を通してみなさんにもしてほしくて、少しでもわかりやすく伝えられたらいいなと思っています。
LGBTQに該当されている方にも読んでみてほしいですし、該当しない人にも特別なことではないということを知ってほしいと思って描いています。
第3巻より抜粋
©Zim Nerima/LINE Digital Frontier
—- 9月15日に第3巻が発売されましたが、何か見どころがあれば教えてください。
シシ先輩:
主人公とは別に野球部の子たちが登場するのですが、その子たちはLGBTQに該当するかすらまだ決まっていません。
自分がこれから明日どんな性別の人を好きになるかわからない、というのを野球部の子たちが話すシーンがあります。
このシーンが自分としては一番わかりやすく描けたかなと思っています。
その部分をぜひ見ていただけたら嬉しいです。
第3巻より抜粋
©Zim Nerima/LINE Digital Frontier
—– これから何かやりたいことはありますか?
シシ先輩:
仕事の面では、『おっパン』をしばらくはがんばって続けていきたいです。
プライベートな面では、自家製の味噌を置いておけるようなスペースを確保できたら、味噌作りをしてみたいです(笑)
素敵なキッチンで(笑)
シッチさん:
海外旅行をしてみたいです。インドネシアと、ハワイと、フランスに。
シシ先輩:
日本人の両親が仕事の関係でインドネシアに居たときに私が生まれました。
それで、(シッチさんは)私の生まれたインドネシアに一度行ってみたいそうです。
—– ありがとうございました!
『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』
単行本 第1巻(既刊)
単行本 第2巻(既刊)
©Zim Nerima/LINE Digital Frontier
https://manga.line.me/book/detail?id=B00163018729
単行本 第3巻(新刊) 発売日 9月15日
©Zim Nerima/LINE Digital Frontier
https://manga.line.me/book/detail?id=B00163296073
(取材協力: LINEマンガ、編集: 森川 創)