数年前から、人気が出ている「苔玉(こけだま)」。若い女性を中心にブームとなって、苔を愛でる「苔ガール」が増えているそうです。
苔玉とは、植物の根を土などで覆って、苔を貼り付けたものです。
コロンとしたフォルムが可愛らしいですね。
最近では、苔玉を作ることにも注目が集まり、自分で作った苔玉を愛でる苔ガールもいるそうです。
そこで、初心者向けの苔玉作り体験レッスンを開催している、新宿御苑の近くの「カルチャースクールいろは」で挑戦してきました。講師の田畑仁美さんです。
制作するのは、田畑さんが手にしている「苔テラリウム(グラス苔玉)」です。
近年では、このようなガラス容器に入れた苔玉が人気を集めています。
苔テラリウムは、通常の苔玉より手入れが簡単で、手軽に生活に取り入れることができます。
例えば、苔玉は毎日水やりが必要ですが、苔テラリウムはガラス容器の中で育てるので、水やりは10日間〜2週間に1度でOKです。また、苔玉は基本的に外で育てますが、苔テラリウムは屋内で育てられるので、インテリア感覚で部屋に置くことができます。部屋の中で育てるため、四季の影響が少ないという特徴もあります。
今回作る苔テラリウムの材料は、水苔、2種類の山苔(ヒノキゴケ、ホソバオキナゴケ)、ネット、てぐす、ガラス容器、石(装飾用)です。
まずは、苔玉の基礎になる水苔をネットに入れます。水苔は手に入りやすい苔で、100円ショップでも売っているそうです。
ネットを絞って、余分な部分はハサミで切ります。
ヒノキゴケに土をつけて、水苔の真ん中くらいまで入れます。
てぐすで結ぶと、苔玉の中が出来上がります。ギュッとしっかり結ぶのがポイントです。
そして、周りをホソバオキナゴケで覆います。左手で苔を固定しながら、右手で苔と苔玉をてぐすで結びつけるのですが、この作業が意外と難しいです。
てぐすを強く巻きつけないと苔がずれてしまいますが、あまり強いと苔が傷まないかと不安になりました。ただ、苔は生命力が強いので、強く巻きつけても大丈夫だそうです。しっかりてぐすを巻くことで、苔を苔玉に固着させることができます。
全体にてぐすを巻きながら、丸く形を整えます。
隙間ができないように竹串などで調節して、苔玉は完成です。
続いて、ガラス容器に装飾用の石を入れます。私は、一番下にピンク色の小石、その上に白色の小石を重ねて2層にして、一番上にはピンクの石を置きました。
苔玉を水につけます。苔は、根元ではなく葉先から水を吸うそうです。
しっかり水につけたら、ガラス容器の中に入れて、完成です!
1時間ほどで出来上がりました。
自分で作るとより愛着が湧き、とても可愛いです。
これから家で育っていく様子を見るのが楽しみです。
田畑さんにお話を伺いました。
—– 苔テラリウム作りの体験を始めたきっかけは何ですか?
苔玉作りを教えて、今年で10年目です。苔テラリウムを始めたのは昨年で、生徒さんたちから「苔玉を部屋に飾りたい」というお声を多くいただいたことがきっかけです。今年2月頃からは、苔テラリウム体験の人気が特に高まっています。
—– 体験レッスンにやってくるのは、どんな方が多いですか?
6割が女性です。年代は幅広く、主に20〜60代の方がお越しになっています。女性同士やカップル、親子など、2人以上で参加する方が多いですが、どちらのプランでもおひとり様歓迎です。また、夏には小学生が夏休みの宿題として苔玉テラリウム作りに挑戦していました。
—– 苔テラリウムを育てるときのポイントはありますか?
直射日光を避けて置くことです。また、ガラス容器に水滴が付いていたら、拭き取るようにしてください。
—– 田畑さんは、どんな経緯で苔玉を作りはじめたのでしょう?
盆栽の勉強をしたことがきっかけでした。盆栽の主木を引き立てる「添え」として苔の作品を作ってから、苔に興味を持って苔玉を作るようになりました。
—– 田畑さんが好きな苔は何ですか?
私は、「シノブゴケ」が好きです。シノブというのはシダの一種で、シダの葉のような形をしていることが名前の由来になっている苔です。
—– 今後、作りたい作品はありますか?
クヌギの炭でできた鉢に苔や観葉植物を入れる「苔の炭鉢」を作ってみたところ、苔と炭のコラボレーションが良いので、炭鉢の形を変えて他のパターンの作品を作りたいと思っています。他にも、苔を生かした作品を作って、みなさんに苔の良さを伝えていきたいです。
—– 苔の魅力は何だと思いますか?
盆栽や日本庭園を見ても、苔はいつも主役にならない存在です。脇役だけど懸命にたくましく生きている姿が健気で、いじらしくて可愛らしく感じます。日本のように苔を愛でる風習は珍しいので、日本の文化としても、苔は魅力的です。
—– 苔の楽しみ方を教えてください。
苔はじっとしていて一見変化がないように思えますが、よく見ていると成長しています。生え変わったり、伸びたりしているのです。苔玉や苔テラリウムを日々見て、変化に気づくと「生」を感じて、楽しめると思います。
体験レッスン中も、インテビュー中も、田畑さんの苔への溢れるほどの愛が伝わってきました。
田畑さんは「苔の世界は奥が深いので、ぜひ扉を開いてみて欲しい」とお話しされていました。
苔ガールの中には、インテリア感覚で苔を楽しむ人もいれば、苔を育てて成長する姿を見守ることで癒されている人もいるそうです。
みなさんも苔の世界の扉を開いてみてはいかがでしょうか?
(執筆 久保井朝美、 撮影 森川創)
関連リンク:
▼カルチャースクールいろは
▼久保井朝美プロフィール
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