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2020.02.05話題・おもしろ

ロンドン国際映画祭グランプリ&主演男優賞受賞! 虐待する側・される側の双方を描く映画『ひとくず』 3月14日(土)公開

2月 5日に公開した記事ですが、この週末に閉幕したロンドン国際映画祭で、映画『ひとくず』が外国語部門最優秀作品賞(グランプリ)と最優秀主演男優賞(上西 雄大さん)を受賞されましたので、ロンドンから、主演・監督・脚本・編集・プロデューサーの上西 雄大さんのコメントと写真を追加し、記事タイトルを変更しました。(編集部注: 2月 17日)

 

上西 雄大さん

 

上西 雄大さん

「虐待の実情をお聞きした夜、心が焼かれるような想いになりました。

虐待被害に遭う子供達は何人もアイロンでの火傷の跡があり、性的な虐待にも。
怒りに胃が畝り、想像する光景に胸が裂かれる想いでした。
僕の父は毎夜のように母に暴力を振るっていましたが僕にはその暴力を向ける事はありませんでした。

そこにはやはり父としての心があったのだと振り返ると感じます。が、僕は父を憎みました。

虐待の被害に遭う子供達は暴力を受け、更にそれ以上の恐怖に襲われる。それは想像すれば震える痛ましい事です。
その夜、一晩でこの映画の脚本を救いを求めて書きました。そして作品に出来ればと願いました。

この作品が劇場で公開される日が来ます。一人でも多くの方にご覧頂きたいです。

そこに僕と仲間達の想いはあります。
そして今回ロンドン国際映画祭においても名誉ある賞を賜り、その想いに更なる力を頂きました。心から感謝致します。」

 

 

上西 雄大さんへのオフィシャルインタビュー:

 

—– 『ひとくず』を製作したきっかけをお教えください。

 

児童相談所の嘱託医をされていた楠部知子先生に虐待のことをお聞きして、あまりに心が痛くなり、その日の夜に脚本を書いて、自分の中で気持ちの整理をつけようとして生まれた作品です。

これを世に出すことが役者の僕らの仕事かなと思って、この映画を撮りました。

 

—–  30年以上児童相談所に勤務しているという児童精神科医師の楠部先生を取材して、ショッキングだったことをお教えください。

 

この映画の中にも出てきますけれど、アイロンで火傷の跡をつけられた子供がたくさんいるということです。

本当に何人もそういう子供を見たと聞きました。この映画の中では描ききれなかったですが、性的なひどい話もありました。

本当に人間がやることではないなと思って、どういうことになればそういうことが起こるんだろうと思いました。

 

—– 家庭内暴力は、上西さんにとって身近な存在と聞きましたが、どう身近なのですか?

 

うちの父親は毎晩のように母親を殴って蹴って、僕は母親をかばって父親と闘っていたという環境にありました。

父親は僕には暴力は振るわなかったですが、家の中に暴力があるというのは自分の中にも子供の時からありました。

その時は人に言わないし、学校の先生にも言わないけれど、そういうことが毎日夜になれば起こる。

今思うと、子供ながらに恥ずかしいという想いを抱えていました。

 

—– 脚本を執筆する上で注意した点はどこですか?

 

描きたかったのは人間の心の中にある良心で、それで負の連鎖を断ち切って、それが救いになるという希望を描きたかったです。

おぞましい虐待の実態を描こうとしたのではなく、救いに歩いていける人間がどういう道を辿れるかということを人間ドラマにしたかったです。

 

—– 上西さんは子供時代に虐待されて育った空き巣の金田かねまさ役で主演し、昨年5月に行われたニース国際映画祭で主演男優賞を受賞されていますが、かねまさ役を演じる上で工夫したところはどこですか?

 

怯えている人間を描きたかったんです。

教養がないことと、虐待に遭ったことで自分の中に大きな傷があることを人に見抜かれたくないということに怯えて、虚勢を張って、人に暴言を吐いて生きている、可哀想な人間をしっかりやろうとしました。

ただ暴言を吐くだけの人間、ただのダメな人間をやれば、そこに深みも出ないし、救いに向かう人間の気持ちの揺れも生まれてこないだろうから、常に怯えているものを心の中に置いてカネマサを演じました。

 

—– 本作には、鞠(まり)を育児放棄する母親・凜と、自分の恋人が息子に暴力を振るうことを黙認する主人公の母親・佳代の二人の母親が出てきますね?

 

この作品で僕はあえて二人の母親を描きたかったんです。

今は時代の中で浮かび上がってきている虐待もありますけれど、時代によって埋もれていた虐待もあります。

時代が違う環境にあっても、虐待は同じように存在していたということがあるので、その中心にいる母親はどういう心境かというのを、二人の母親の姿で描こうとしました。

あえて回想シーンを多く作って同時進行のように構成したのは、昭和の中にいる母親のスタンスをきちんと表現したいからでした。

 

—– 金田の「アイス食えば、嫌なことも忘れられるんだ」というセリフが印象的でしたが、実体験からきたのでしょうか?

 

そうです。父親が暴れて、母親がボロボロになって、精神的なストレスで寝たきりになったんです。

父親が散々暴れて、飲みに行くのか女性のところかどこかに行ったと思うんですけれど、その後泣く母親を布団に連れて行き、アイスクリームとかお菓子とかを食べて、嫌な気持ちに区切りをつけるみたいなところは子供の時に何度もありました。

 

—– 刑事が金田について、「あいつは、あんな風にひねくれて生きて当たり前だ」と理解を示しているのが、ステレオタイプの刑事でなく素敵でしたが、刑事との関係性を描くにあたって、こだわったところはありますか?

 

ダメなやつで誰もが見放した奴にも、どこかに一人位は理解者がいて、その人間のことを違う角度から見てくれる人がいるといいなと僕は思うんです。

違う角度から金田を俯瞰で見てやって、刑事としては三流だと思うんですが、あの刑事は人間味があって、実在していたように思います。

 

—– 田中要次さんの「俺にもよう、人に言えねぇ前があるんだ。だけど、いつまでもいじけてちゃ、余計暗い道を歩かなきゃいけなくなっちまう」というセリフもぐっときましたが、田中要次さんとは役柄について、何か話をされましたか?

 

演じていただく前に、脚本を読み込んで頂いていたので、全てわかって頂いていたんですが、確認という意味で、「こいつも何かやったんだろうな。でも頑張ってそれを乗り越えてやってるんだよな?そういう人いっぱいいるもんね」という話はしました。

 

—– 木下ほうかさんとは役柄について、何か話をされましたか?

 

ほうかさんがプロだなと思ったのは、脚本をお渡しして現場に来て頂いた時に、僕がどういうタイプの人間をやってほしいかということを明確に確認されました。

ご自分で「こうでないとダメだからこう」とかいうのではなく、監督の僕がこういうタイプの人間をここに置いたという作り手の意図を確認して、演じられていました。

 

—– 本作は、最近の日本映画では珍しい男臭さがありますが、どのような映画から影響を受けていますか?

 

やはり子供の時映画を見て憧れた、高倉健さん、松田優作さん、原田芳雄さんです。

そういった方のテイストは僕の中にずっと残っているので、無意識の内にそれがこの映画の中に埋まった気がします。

 

—– 主題歌の吉村ビソーさんによる「Hitokuzu」の制作秘話を教えてください。

 

僕が作詞して、鼻歌で歌ってデータを吉村ビソーさんに送ったら、ビソーさんが「全部はまらないから、これをこのまま歌詞にはできません」とおっしゃって、結構話しながら歌詞をいじりながら仕上げました。

ビソーさんはいつも弾き語りの、大阪の味をもったシンガーで、僕の作品は大阪で作っているので、彼とは今後もずっと一緒にやっていだたきたいと思っています。
挿入歌「ひとくずの詩」は、僕の歌詞をそのまま梁原三さんが歌にしてくれました。

 

—– 各国の映画祭でご覧になった方たちからは、どのような感想がありましたか?

 

マドリードでは全員が立ち上がってスタンディングオベーションをして頂いたということですし、外国の方でも同じ所で笑うし、悲しみも十分理解して頂いて、最後に感動してみなさん泣いていらっしゃいます。

外国の方でもリアクションは同じで、人間は心は同じなんだなと思っています。

 

—– 本作で特に注目してもらいたい部分はありますか?

 

カネマサは虐待の被害者で可哀想な男で、当然鞠も虐待の被害者の中心にいますけれど、この作品の中で柱として通っているのは、二人の母親のその心と存在と痛みなので、そこにカネマサと鞠を同じように置いて見て頂けたらと思います。

 

—– 読者の方にメッセージをお願いします。

 

虐待を扱っている暗く重い映画だと思われるかもしれませんが、決してそんな映画ではなくて、人間のドラマを描き、むしろ温かい人の心を語りたいと思って作っている映画なので、暗く重い気持ちで劇場を後にすることはありません。

安心してぜひ劇場にお越し頂けたらと思います。

 

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3歳まで戸籍がなく、実の父親が母親に日常的に手をあげているのを見て育った、「居場所のなさ」「弱者」を身をもって知っている監督・脚本・編集・プロデューサーの上西 雄大さんが制作した『ひとくず』。
その上西 雄大さんが、30年以上児童相談所に勤務している児童精神科医師の楠部知子先生から「虐待してしまう大人もまた傷ついている」という実態を耳にし、傷ついた子供だけでなく、虐待をしてしまう大人にも眼を向けてあげてほしいと制作した感動のエンターテイメント。

 

小南 希良梨さん 上西 雄大さん

 

ロンドン国際映画祭 外国語部門最優秀作品賞と最優秀主演男優賞のトロフィー

 

堀田 眞三さん、飯島 大介さん、田中 要次さん、木下 ほうかさん他ベテラン俳優が脇を固めた、映画通必見の作品です。

2月8日開幕のロンドン国際映画祭で、外国語部門最優秀作品賞(グランプリ)と最優秀主演男優賞(上西 雄大さん)を受賞され、3月14日(土)より公開の渋谷・ユーロスペースを皮切りに、3月28日(土)より名古屋・シネマスコーレ、4月17日(金)より大阪・テアトル梅田にてほか京都みなみ会館などで全国順次公開予定です。

 

【予告編】

【ストーリー】
生まれてからずっと虐待される日々が続く少女・鞠。食べる物もなく、電気もガスも止められている家に置き去りにされた鞠のもとへ、犯罪を重ねる破綻者の男・金田が空巣に入る。
幼い頃に虐待を受けていた金田は、鞠の姿に、自分を重ね、社会からは外れた方法で彼女を救おうと動き出す。
そして、鞠の母である凜の恋人から鞠が虐待を受けていることを知る。
虐待されつつも母親を愛する鞠。
鞠が虐待されていると確信した担任教諭は、児童相談所職員を連れてやって来るが、鞠は母の元を離れようとせず、保護する事ができずにいた。
金田は鞠を救うため虐待をする凜の恋人を殺してしまう。
凜を力ずくで、母親にさせようとする金田。
しかし、凜もまた、虐待の過去を持ち、子供の愛し方が分からないでいた。
そんな3人が不器用ながらも共に暮らし、「家族」の温かさを感じ本物の「家族」へと近付いていくが、、、

 

小南 希良梨さん、税所 篤彦さん

 

【出演者のコメント】

鞠役:小南 希良梨さん

鞠ちゃんという女の子は、いつも家の中で1人でいてさみしい思いをしている役なので、どんな気持ちで過ごしてたのかなと考えました。あとはその気持ちを表情で現せられるように心がけました。
撮影現場では藍さんと出番がない時は色んなお話しをして楽しかったですし、上西監督は『ひとくず』のお話の中でも鞠に優しくしてくれる役ですが、撮影以外でも優しくて、たくさん話しかけてくれたり面白い事を言ったりしてくれて、撮影に行くのが楽しかったです。

 

小南 希良梨さん、古川 藍さん

 

凜役:古川 藍さん

育児放棄をする気持ち、我が子への愛情表現の仕方がわからない、駄目な男の側じゃないと不安になる…自分自身とかけ離れた凛を表現するのはとても難しかったです。
凛の生きてきた世界を表せば表す程、ふと、こんな人が本当にいるのだろうか…と首を傾げる事が多かったです。
難しい心の動きを表現する事を意識し、撮影に臨んでいました。
初共演だった鞠役の小南希良梨ちゃんは、お芝居する事が楽しいと言っていて、その真っ直ぐな気持ちをそばで見ていて私もとても刺激を受けました。

そして、主演、脚本、監督の上西さんにはこの『ひとくず』で凛役をさせて頂けた事をとても感謝しています。
上西さんとは今までにも何作も共に映画を制作してきましたが、常に役者目線で難しい表現もわかりやすく伝えて下さり、カネマサと凛の芝居も丁寧に撮影してくださってリラックスした状態で挑む事が出来ました。
上西さんがいなければ、『ひとくず』も生まれていないし、恵まれた環境でお芝居をする事が出来て幸せです。

この作品は虐待という重たいテーマを取り扱っていますが、辛く悲しいだけじゃなく、『ひとくず』の世界の中で生きる人の様々なドラマを描いているので、クスっと笑える場面もありますし、親子の愛を感じる場面もあり、温かい気持ちになって頂けたら…またこの作品を観て今増えている虐待に少しでも何かを感じてもらえたら…と願っております。

 

徳武 未夏さん

 

佳代役:徳竹 未夏さん

カネマサを作り上げる基盤の一つになった母、金田佳代。只の酷い母親ということだけではなく、彼女もまた、無意識下で葛藤の様なものを持っていることが表現できるよう気をつけました。
何度か出てくるタバコを吸うシーンは、普段タバコを吸わないので、鏡の前で違和感がなくなるまで、気持ちを乗せてタバコを吸う仕草を、練習しました。
高校生になった匡郎(まさお)に殺人させてしまった時は、無意識下の葛藤に立ち向かえた所だと思います。
だから、匡郎にとって、母親と感じられる一面になったのではないでしょうか。

映画製作時、10ANTSメンバーは、役者とスタッフを兼任して制作をします。
劇中に出てくる鞠と凛の部屋は、私の住まいなのですが、冒頭のゴミ屋敷を準備しているスタッフ(私を含め) に、鞠の生活を考えた上で、どんな風にゴミが散乱していくのかを考えて導線を作るよう指示がありました。
今考えると、その行程は役者ならではな気もします。
10ANTSは、監督が俳優であるお陰で、役者が演じやすい進め方になっているのではないかと感じます。
お芝居に重点を置いているからこそ、観ている人をどんどん作品に引き込んで行くのだと思います。

「ひとくず」という作品を通して児童虐待に関心を持っていただき、少しでも、救われる命のあることを祈っております。

 

田中 要次さん、上西 雄大さん

 

【出演】(敬称略)
上西 雄大
小南 希良梨
古川 藍
徳竹 未夏
城 明男
税所 篤彦
川合 敏之
椿 鮒子
空田 浩志
中里 ひろみ
谷 しげる
星川 桂
美咲
西川 莉子
中谷 昌代
上村 ゆきえ
工藤 俊作
堀田 眞三
飯島 大介
田中 要次
木下 ほうか

 

木下 ほうかさん、古川 藍さん

 

【スタッフ】(敬称略)
監督・脚本・編集・プロデューサー:上西 雄大
エグゼクティブ・プロデューサー:平野 剛 中田 徹
監修:楠部 知子
撮影・照明:前田 智広 川路 哲也
録音:仁山 裕斗 中谷 昌代
音楽プロデューサー:Na Seung Chul
主題歌:吉村ビソー「Hitokuzu」
制作:テンアンツ
配給・宣伝:渋谷プロダクション
協賛:(株)リゾートライフ ドリームクロス(株) 串カツだるま カンサイ建装工業(株) 高橋 鋭一 平野マタニティクリニック (株)エフアンドエム (株)中島食品 ALEM(株) (株)USK (株)ラフト

 

上西 雄大さん、小南 希良梨さん、古川 藍さん

 

公式サイト: http://hitokuzu.com/
Twitter:@hitokuzu_movie
facebook: hitokuzumovie

©上西雄大

 

(編集 森川 創)