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2020.02.04癒し系・女子向け, 科学・Tech

食物学 佐藤 秀美先生が伝授! 野菜で美容と健康を手に入れよう!(後編)

 

食物学・学術博士 佐藤 秀美先生に、前編では、美容と健康には、日ごろの食生活でいろいろな種類の野菜の摂取が必要なことを説明していただきました。
後編では、新ジャンルの野菜 = 野菜100%加工品について、解説していただきます。

 

佐藤 秀美先生

 

—– 忙しい毎日の中で、より多くの野菜を摂取するのは難しいですよね。

 

コンビニで手軽に揃えられるものがこちらです。

※図表はクリックすると拡大表示します。以下同じ。

 

レトルトごはん、フリーズドライのお味噌汁には冷凍野菜を加えています。
おひたしや、金時豆もレトルトパックで売られているものです。
魚は 鯖缶です。コンビニで手に入る食品でも上手に組み合わせれば、野菜をしっかり摂ることができ、栄養の観点からほぼ完璧な食事になるんです。

和食派ではなく、洋食派の人向けの食事が上の写真です。
カボチャ和えもサラダ豆もレトルトパック、生野菜はパックサラダで売られています。

スープ゚は粉末スープを牛乳で溶いたものです。

 

(写真提供:公益財団法人 山形県学校給食会;http://yamagaku.or.jp/outline

 

上の写真は、加熱前後の野菜で、重量は同じです。野菜を加熱するとかなりボリュームが減ってコンパクトになることがわかります。

ふだん生野菜サラダを山盛り食べた時に、野菜をたっぷり摂った気分になりますが、実際には思ったほど野菜を摂れていないのです。

野菜は加熱してボリュームを減らすことで、量をたっぷり食べることができます。

 

加熱することのメリットは、単に量を多く食べられるだけでなく、加熱による細胞の破壊で、栄養素が吸収しやすくなる点も見逃せません。
野菜は細胞の集合体ですが、この細胞の中に栄養素が閉じ込められています。細胞のまわりは食物繊維で囲まれています。

食物繊維は人間の消化酵素では分解できない成分なので、細胞が破壊されていなければ、細胞の中の栄養素は体内で吸収されません。

同じ量の野菜を食べても、細胞の破壊されている程度で体内に取り込める栄養素の量が違ってきます。

野菜を食べて、その栄養効果を発揮させるためには、野菜の細胞を破壊する必要があります。

 

 

野菜の細胞を破壊するためには、包丁で切る、電子レンジで加熱する、ゆでる、フードプロセッサーで粉砕する、搾るといった方法があります。

上のグラフは、これらの方法によって、ニンジンからβ-カロテンの溶け出す量がどのくらい違うかを調べた結果です。

細胞を破壊すればするほど、細胞の外に出てくるβ-カロテンの量は多くなります。つまり、体内で吸収される量が多くなるのです。

 

私がよくやっているのは、冷凍です。キャベツや小松菜、ネギなどの色々な野菜をザクザク切って、生のままジッパー付きの袋に入れて冷凍庫に入れます。
水が氷になると体積が10%ほど増えるので、野菜を冷凍すれば、細胞内の水が凍って膨張し、細胞の一つ一つが破壊されます。

冷凍した時の細胞の破壊レベルは、上のグラフの搾汁(ジュース)に近いと考えています。

 

私は毎朝、野菜たっぷりの具だくさん味噌汁作っていますが、これに冷凍した野菜を使っています。

鍋に水を入れて火にかけ、凍った野菜などの具材を次々入れていき、沸騰したら火をとめて味噌を加えて完成です。

鍋に水を入れてから味噌汁ができるまでの時間はおよそ5分。冷凍した野菜は水が沸騰した時点で既に軟らかくなっていて煮込む必要ないので、野菜たっぷりの味噌汁でも時間をかけずに作れます。

 

 

 

野菜を1日 350g以上摂ろうと思えば、野菜 100%加工品を上手に利用するとよいでしょう。

国民健康・栄養調査(厚生労働省)では、野菜ジュース(100%ジュース)を生の野菜と同等に扱っており、毎年公表される野菜摂取量には野菜ジュースの摂取量も含まれています。
野菜100%加工品は、「生(カット野菜)」、「冷凍」、「ゆでたもの(缶詰/ビン詰」、「つぶしたもの(ピューレ/ペースト」、「しぼったもの(野菜ジュース)」に分かれます。

 

カット野菜というと、栄養素がないと思われがちですが、上のグラフを見ておわかりのとおり、家で生野菜を切った時の栄養とほとんど変わりません。

 

それどころか、生野菜を買ってきてから、冷蔵庫に 2日間入れておいたら、ビタミンCが 6割まで減ってしまいます。

そう考えると、家で冷蔵庫に保存していた野菜を切った時よりも、買ってすぐに食べるカット野菜の方がかえって栄養素を多く摂れる場合もあります。

 

 

 

上のグラフは、生野菜、家でゆでた野菜、市販の冷凍野菜の栄養比較です。

市販の冷凍野菜はさっとゆでた状態で冷凍されたものですが、家庭で生野菜をゆでた場合と比べると、ブロッコリーを除けば、栄養価はほぼ同じです。
冷凍野菜は、多くの場合、産地の近くにある冷凍工場で、採れたての野菜をすぐに冷凍します。冷凍中には栄養素は減りません。
これに対して、生野菜の場合、流通の過程で野菜が呼吸をし続けているので、収穫後はどんどん栄養が失われていきます。

買ってきて冷蔵庫に保存してからゆでたりすれば、市販の冷凍野菜よりも栄養素がかなり少なくなることもありがちです。

 

 

上のグラフは、左が前篇でご紹介した生野菜のもの、真ん中が野菜ジュースの種類による栄養価の違いのもので、両者ともに同じ重量で比べています。

右は野菜100%加工品のグラフで、一人分の食事に使う量で栄養価を比べたものです。

前編でもお伝えしたように、1種類の野菜ですべての栄養素を摂れると思うのは間違いですが、野菜ジュースや野菜 100%加工品についても同じことが言えます。

上のグラフから、野菜ジュースも野菜 100%加工品も、生野菜と同じようにビタミン・ミネラルの供給源として価値が高いことが分かります。

野菜ジュースや野菜 100%加工品は“新ジャンルの野菜”と捉え、生野菜とともに、色々な種類を組み合わせて摂ることが、350g以上の野菜に含まれる栄養素を体内に取り入れるためには有効です。

 

上のグラフは、左から、いつも食べている野菜を 350g摂った場合、現状の不足分を緑黄色野菜(小松菜)で補って 350g摂った場合、現状の野菜不足で野菜ジュースを摂った場合で、それぞれどの程度栄養を改善できるかを試算した結果です。

 

現状の食生活に野菜ジュースをプラスするだけで、現在食べている野菜をそのまま 350g摂った場合以上に、栄養素を多くとれることが分かります。

さらに、現状の野菜不足分を緑黄色野菜で補えば、栄養摂取量はかなり増えてきます。

 

 

緑黄色野菜を摂取するなら、ぜひ油と一緒に摂りましょう。
緑黄色野菜に多いβ―カロテンやビタミンKといった脂溶性ビタミンは、油と一緒に摂ることで腸管からの吸収率が高まります。
β-カロテンをそのまま摂るよりも、油と一緒に摂った方が、β-カロテンの吸収率が 7倍高いという結果も報告されています。

トマトにはβ-カロテンのほかリコピンも豊富に含まれていますが、リコピンもまた油と一緒にとることで、吸収率が 2倍高まることが報告されています。

野菜ジュースを飲む時にもオリーブオイルを小さじ 1杯ほど入れると栄養効果が高まります。

 

 

野菜 100%加工品を“新ジャンルの野菜”と捉えれば、色々な場面で野菜を “チョイ足し” できるようになります。
例えば、忙しい時にはレトルトカレーに、ミックスベジタブル、ローストオニオン、トマト缶などで野菜を “チョイ足し” すれば、手間をかけなくても野菜をしっかり摂ることができます。
このチョイ足し野菜カレーに、ゆでタマゴを 1~2個添えれば、栄養バランスの整った食事の完成です。
私も時間がないときには、チョイ足し野菜カレーとゆで卵を食べています(笑)

 

家庭の食事では、「手作りにこだわる」前に「栄養を摂ることにこだわる!」ことが大切です。
食事作りの手抜きに罪悪感を感じることはありません。今はレトルト食品をはじめ簡便に食べられる食品がいろいろ登場し、便利な世の中になっています。
忙しい時には、これらの食品に野菜の “チョイ足し” を心掛け、野菜をたっぷり食べて栄養をしっかり摂りましょう。

 

 

—– 佐藤先生、2回にわたり、詳しく説明していただき、ありがとうございました。
また別のテーマで、ぜひよろしくお願いします。

 

取材協力 シェ・ヌー

https://tabelog.com/tokyo/A1317/A131715/13018211/

 

(出演・解説・資料提供 佐藤 秀美先生、執筆・撮影 森川 創)
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シェ・ヌー
https://tabelog.com/tokyo/A1317/A131715/13018211/