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2015.07.01科学・Tech

楽しく天気を予想してみよう! 気象予報士 今井さんに直撃インタビュー!

■はじめに

ネット・テレビ・ラジオ・新聞を通じて、知りたいときに誰でも簡単にお天気の情報が手に入る時代。
こんなに身近なお天気ですが、もう少し意識すると、今までよりも もっと楽しく充実した生活になるかもしれません。

今回は、日本気象予報士会に所属する気象予報士でフリーライターの 今井明子さんを気象科学館にお招きして、初心者にもわかりやすくお天気についてお話を伺いました。

インタビュアーは、楽しいニュースでは もうすっかりお馴染み、フリーアナウンサーのあさみさんです。

なお、撮影にご協力いただいた 気象庁 気象科学館は、気象庁の気象業務を紹介したり、
災害から身を守る方法を知ることができるように、映像や機械の展示を行っていたりしている施設で、東京 大手町の気象庁内にあります。入場無料です。詳しくは、記事最後の「関連リンク」をご覧ください。

 

 

■インタビュー

写真1
<フリーライターの 今井明子さん>

— [あさみさん 以下、略] 気象の世界に興味をもつようになったきっかけは何ですか?

[今井明子さん 以下、略] 小学生の頃、自宅に『天気のひみつ』といった題名の学習マンガがあって読むのが好きでした。
中学3年生になり、学校の理科の授業で気象のことも勉強するようになって面白いと思っていた頃、気象予報士の資格試験が開始されるニュースをみて、これならできるかもしれないと思いました。
ただ、気象予報士の受験勉強は フリーランスになってから始めました。

 

写真2
<雲の分類>

— 初心者にもわかるような天気予報はありますか?
たとえば、「夕日がきれいだったら次の日は天気が良くなる」みたいなものは他にもありますか?

ことわざのひとつで、「太陽や月に暈(かさ)がかぶっていると、次の日は雨」というのがあります。
これは、理論上も正しいことです。
温暖前線が近づくにつれて、さまざまな雲が現れるのですが、ちょうど巻層雲(けんそううん)が現れると太陽や月に暈(かさ)がかかります。巻層雲が現れた次の日には、雨が降る乱層雲に変化していきます。

「飛行機雲ができているときは、天気がくずれやすい」というのもあります。
飛行機は水蒸気を出しながら飛行しているのですが、大気中の湿度が高いとすぐに飽和して、水蒸気が雨粒に変化し、尾が長く伸びていく飛行機雲ができます。ただし、湿度がやや低ければ、飛行機雲はできてもすぐに消えてしまいます。

あと、「つばめが低く飛んだら雨」などの昔からある ことわざも、よく当たりますよ。
全国の地域ごとにも 細かいことわざがあります。
「あの山にこんな雲がかかっていると突風が吹く」など、地元の農家や漁師の方が話していることは信用したほうが良いと思います。

 

— 今井さんのように元々興味がある人ではなく、一般の人に気象に興味をもってもらうとしたらどういったことが糸口になりますか?

空を見上げると いろいろな雲が出ていたり、たまに虹がかかっていたりするのを発見すると面白いと思いませんか?
とっかかりは、まずはそこじゃないかなと思います。

その次は、天気予報です。
お天気キャスターのみなさんは、天気図だけでなく、お天気のマメ知識を話されますよね。
そこから気象に興味が出てくるのではないでしょうか。

 

— 天気予報では、傘が必要かどうかしか見てない人も多いと思うのですが、お天気のマメ知識や天気図を見ることで、生活に役立つことはありますか?

私の場合は、その日の服装選びのためにチェックします。
また、旅行や出張で雨に降られたときに、雨宿りをして雨をやり過ごすのか、中止にするのかといった判断に利用できます。

 

— お天気マークだけでなく、さらに踏み込んでみたほうが、より生活に生かせるということなんですね。

そうですね。たとえば、明日、アウトドアスポーツやバーベキューなどをするといった場合、午前中は雨が降っているけれど、午後からは止むので、中止するかどうかの判断をしやすくなります。
今の季節、梅雨前線がどの位置にあるかで、天気が違っていますので、ちゃんと天気図を見るとある程度、判断がつくはずです。

 

— 天気図を見るだけで、前線の位置から明日は雨かどうかわかるようになりますか?

ある程度はわかります。
たとえば、関西に低気圧があって雨が降っているのなら、次の日、関東で雨になる可能性が高いですよね。
また、等圧線が混んでいたら、風が強く吹くことも予想できます。

写真3
<高層気象観測に用いる風船(ゾンデ)>

— 気象予報士さんが天気図で目を付けるポイントはありますか?

たまに等圧線の中で、不自然な形に出っ張っている個所があったりします。
天気図には「低」という文字が出てないのですが、そこに隠れた低気圧がある可能性があるので、
「ここに何かいる!」と注目することがあります。(笑)

また、テレビにはあまり出てこないのですが、高層天気図を見て、上空に寒気が居座っているのか、気圧の谷がどこにあるのかをチェックすることもあります。

 

— 一般の人に 天気予報を こういうふうに生かしてほしいといったことはりますか?

一番生かしてほしいのは、「高解像度降水ナウキャスト」(http://www.jma.go.jp/jp/highresorad/)です。今、一番強く降っている「赤や黄色の個所」が次にどこに移動するのかをこまめにチェックしてもらえると、身の安全につながります。
「赤や黄色の個所」がずっと同じ場所に留まっていたら、その場所は洪水になったり、土砂崩れになるかもしれないです。特に今の季節は。

写真4
<雨量計>

— 特に近年、梅雨の後半は、集中豪雨が多発していますが、災害対策としてはどのように考えたらよいですか?

危険な場所に近寄らないというのが基本です。
たとえば、「アンダーパス」という線路などの下をもぐる道路には、水が溜まりますので、車でうっかり通行してしまうと、車外に出られず溺れて死に至ることがあって、とても危険です。
また、今、大雨警報が出ている場合は、雨が降っていなくても、土の中に水分がたまっていて、土砂崩れの恐れがありますから、がけの近くから避難してください。

 

— たとえば、降水確率 30パーセントと 100パーセントだと、100パーセントのほうが雨が強く降ると思っていたのですが、実は 違うんですよね?

はい、そうです。雨の強さや量とは関係ありません。
私は一般の方向けのお天気教室の講師もやっていて、そこで、よくそういう話をしています。
降水確率の誤解の他に、雷が光ってから鳴るまでの時間が長いと安心というのもよくある誤解です。
音は 音速340メールだから、光ってから 10秒で音が聞こえたら、雷は 3.4キロメートル先にあると思われがちです。
でも、積乱雲は、十数キロの範囲で広がっているので、その雲の下にいれば、たとえと遠くで雷が鳴っていても、自分の頭上に落ちる可能性がありますから、雷が鳴っていたら、すぐに安全な場所に避難したほうが良いのです。

写真5
<漂流ブイ>

— 天気予報では「雨が降らない」と言っていたのに、実際には雨が降るということがよくあります。0.5ミリだと降らないことになりますが、体感的には、0.5ミリはけっこうな雨量ですよね。

まったくそのとおりです。それに、自分のいるところで雨が降ってないから予報が外れたと思っても、予報区のどこかで1ミリ以上の雨が降れば、「降った」ことになり、予報は当たったことになるんですよ。

 

— 天気予報が外れやすい時期というのはありますか?

あります。梅雨時と、関東地方の冬の降雪の予報です。
梅雨時は、梅雨前線が、ちょっと北か南かによって、雨の降る場所が違ってきます。
梅雨前線の位置は、冷たい空気と暖かい空気の力関係で、決まります。
また、関東の雪は、いろいろな条件が重ならないと降りません。
関東の南岸を低気圧が通ると雪が降るのですが、その通過する場所が北か南か、上空に寒気が入ってきているかどうかで雨になったり、雪になったり、降らなかったりします。
予報がすごく難しいです。

 

— 特に関東の場合、雨か雪かで影響が全然違いますよね。

関東の場合、降雪災害への備えがないですからね。

 

— 気象庁が発表する予報と、各気象会社が発表する予報が微妙に違っている場合があるのはどうしてですか?

同じ気象データを使っていても、最終的には、人が判断しているため、それぞれの予報に違いが出てきます。

 

— 天気予報はどういう順番で見ていくのが良いですか?

まずは、晴れか雨かをチェックし、次に降水確率をみるのが良いと思います。
次に、気温と湿度。これで体感温度がわかります。
もう少し踏み込むのでしたら、風をみるのが良いです。強い風が吹けば体感温度が下がりますし、北風なら気温が下がり、南風が吹けば気温が上がります。朝 寒くても、気温が上がるのが分かっているなら、途中で1枚 脱げるような服装にすることができますよね。

天気図を見るのはそのあとでいいでしょう。天気図からは自分なりの予報をすることもある程度はできますが、一般の人はそこまでする必要はあまりないかもしれませんね。

写真6
<『気象の図鑑』>

— 気象予報士さんはどんなお仕事をされているのですか?
テレビでお天気キャスターをされていたり、メディアの裏方で天気予報を書いていたりといったイメージがあるのですが。

まずは、気象会社に勤務している方がいます。そして、お天気キャスターさん。また、業務上、必要性に迫られて取得している人もいます。たとえば、航空自衛官や航空管制官、防災関連・環境関連の仕事に就いている方などです。
ほか、本業は気象とは関係なく、気象が趣味で取得している人もいらっしゃいます。

 

— 気象予報士になって世界が変わりましたか?

『気象の図鑑』という本を出すことができました。(笑)
資格を取ってから、お天気の講座を担当することになったのも大きいです。
文章を書くというかたちだけでなく、講師という形で一般の方にわかりやすく伝えていくという仕事が増えました。

 

— 本日は、長時間にわたりインタビューに答えていただいて、ありがとうございました。
写真7
<今井さんと はれるんと 岸田あさみさん>

 

■関連リンク

気象科学館(気象庁 本庁内)

日本気象予報士会

今井明子さん

プロフィール
 TABIZINE ~人生に旅心を~
 『気象の図鑑』 (まなびのずかん)

 

あさみさん

・ウェザーマップ 久保井朝美プロフィールページ

お天気キャスター久保井朝美さんにロングインタビュー

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